「定着」と「活躍」から現状分析を

4項目を中心としたデータを分析することによって、各企業の課題が見えてきます。できれば、4項目に加えて、「女性活躍推進の構造図」に示したような項目についてもデータを把握していただきたいと思います。女性の活躍は、家庭生活と仕事の"両立"などによって実現する「定着」(仕事を辞めずに続けること)と、職場で能力を発揮することによる「活躍」(期待役割に見合った仕事を任され、正当に評価されること)の両面から考えていく必要があります。男女の活躍度合いにどのくらい差があるのかは、最終的には平均賃金指数の男女差に表れます。しかし、平均賃金指数はあまりにも総合的な指標すぎて、ここに格差があっても、具体的にどんな問題があるのかは見えにくいと思います。

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女性活躍推進は「定着(両立)」と「活躍(均等)」によって成り立つ。「平均勤続年数」など、各項目を数値化し、他業界や同業他社と比較することにより、女性活躍推進に関するそれぞれの企業の進展度や問題点を明らかにすることができる。

そもそも「採用」ができていなければ始まりませんし、女性は一般職、男性は総合職というように分かれてしまっていては、女性の活躍の幅が狭くなってしまいます。「定着」は、たとえば4項目の中の「勤続年数の男女差」の高低で見えてきます。さらに、「3年目定着率」、「出産時定着率」、「10年目定着率」を分析すると、どのような段階に就業継続の課題があるのかがわかります。3年目定着率が低いのであれば、初任配属時の担当業務や上司、長時間労働などに課題があるのかもしれませんし、出産時定着率が低いのであれば、育児休業や短時間勤務制度などの利用しにくさなどに問題があるのかもしれません。

「活躍」の指標の1つが、最近注目されている「管理職女性比率」です。「管理職予備軍女性比率」、「10年目配置」、「評価、異動・転勤、研修」、「初任配置」などと併せて分析すれば、女性管理職比率が低い原因が絞り込めてくるでしょう。異動・転勤経験の男女差や10年目の配置に男女差があれば、キャリア形成に必要な職務経験が女性に十分与えられていない可能性があります。管理職候補の女性比率は低くないのに、管理職女性比率が低いのであれば、候補となる層の女性が、管理職に必要な経験や能力を身につけられているかどうか自信が持てていない可能性がありますし、管理職の働き方が厳しすぎて、管理職になると仕事と生活を両立できないと考えているという可能性もあります。