一番効くのは労働時間の圧縮

その中でも一番女性たちに希望を与えるのは「長時間労働慣行の是正」です。伊藤忠、大和証券など、「両立支援→女性活躍推進→男女含めた労働時間の改革」へと進んだ企業の方に伺うと、「長時間労働がない」ということが、いかに女性に希望を与えるかがよくわかりました。

管理職人材とされる女性たちは20代後半から30代。ちょうど「出産」を考える年齢でもあります。その時に「管理職の候補に」と言われても、良い返事はできない。それは女性が頭のどこかで「子育てとの両立ができるのか?」とWLBを自問自答しながら働いているからだと思います。

もしこれからの「出産」を考えていたら、「管理職候補」の打診は迷惑でしかない。しかしその迷惑が希望に変わるのは「長時間労働しなくても働ける」環境が整ったときでしょう。そのほかにも「場所と時間にとらわれない柔軟な働き方」(在宅勤務やフレックス制度)、「評価の改革」などいろいろとあるのですが、一番効くのは労働時間だと思います。

制度はあっても、やはり自分だけが早く帰って、他は有休もとれずにガシガシ残業している状態では気持ちがくじける。決まった時間内で勝負できるようになれば、「この会社に残って活躍できる」という希望につながるのです。女性の場合「活躍したい=管理職」ではないのですが、長期に就業し活躍することで管理職へのステップを踏んでいけます。

しかしこの「労働時間」をいじるのは、経営者にとってかなりの勇気がいることです。ある会社の前社長は「残業時間を削減して、効率の良い働き方に変えるのが良いのはわかっているが、どうしても勇気がでなかった」と言ったそうです。

全社員が一丸となって夜遅くまで働いている……本当にその時間を削って今の数字を保つことができるのだろうか? 誰もが怖いでしょう。

しかし、その英断をする経営者はこれからも確実に増えて行くでしょう。その大きな理由は人材確保です。良い人材を確保したいと思ったら、「夜遅くまでガツガツ働く会社」は男女ともに人気がありません。