■ジャーナリスト 佐藤留美さんから
「安倍さんへ」
アベノミクス効果なのでしょうか。2013年の日本の女性の労働力人口は2804万人と、前年より38万人増加しました。
しかし、その内訳を見ると、少しがくぜんとしてしまいます。女性の多くはパートなどいわゆる非正規雇用者で、その割合は男性の21.1%に対して55.8%に及び、2012年より1.3ポイントも上昇しています。
正社員の女性も、他のOECD諸国と比べて活躍しているとは言いがたい。女性管理職比率の差がそれを物語っています。
なぜ、日本では女性が活躍しにくいのか? 座談会に出席してくれた女性たちが言う通り、多くの女性が子どもを産み、育てる段階で両立の壁を乗り越えられないからです。その最大の壁が、日本の組織に根強く残る「長時間労働信仰」です。
日本の組織では、各人の職務範囲も評価基準も明確ではないため、長時間働く人間を評価する傾向にあります。この習慣が続く限り、子育てのために早く帰る女性は、たとえ短時間で成果を上げたとしても、永遠に評価を勝ち取れないままです。
最近では、短時間勤務制度や託児所を完備する会社も増えています。しかし、総理は時短を選択した女性が、実際には全然「時短」になっていないケースが多いことをご存じですか?
時短を選択する人の多くが、「労働基準法に定められた、1日8時間」くらい働いています。では、なぜ彼女らは給料が大幅に減る「時短勤務」をわざわざ選択しているかというと、それは「残業はできません」というメッセージを送るためです。
逆に、フルタイムの女性は残業を受け入れるしかありません。悲しいかなここ日本では、労働時間規制はあってないがごとし。法律に定められた1日8時間、1週間40時間の労働時間を守るだけでも、女性の就業率は高まるに違いありません。
また、あらゆる雇用者が短時間でも成果を出せばきちんと評価されるように、評価や査定の仕組みを変えること。その前提として、欧米並みに業務内容とミッションを明確にすることが大事だと思います。
撮影=的野弘路