熱戦が続くW杯。過去に全日空でビジネスマンの経験がある、湘南ベルマーレの反町康治監督に、ビジネスとサッカーの共通点や注目選手、そして一味違うW杯の楽しみ方について話を聞いた。

連日盛り上がるサッカーW杯。熱烈なサッカーファンを自認する経営者が少なくない一方、今大会の日本代表監督である岡田武史氏が著名な経営者と懇意なのも有名な話だ。サッカーとビジネスには共通点があるのだろうか。

サッカーの中で、ビジネスマン、特に管理職にとって最も参考になるのが監督だろう。個性的な監督が繰り出す様々な采配は、ビジネスのマネジメントと通じる部分も多い。

今回のW杯でもアルゼンチン代表のマラドーナ監督が、身振り手振りを入れてピッチの横で指示している姿が印象的である。しかし、試合での采配は監督の職務のごく一部にすぎないと反町氏は言う。

「監督には試合前に考えなければならないことがたくさんあります。W杯で言うならば、何週間前から選手を集合させて、どのような練習を組むのか。選手の力のピークを1戦目に合わせるのか、2戦目に合わせるのか。どんな相手と強化試合を組むのか。選手が怪我をした場合、医療体制は整っているのか。長時間移動のときの睡眠はどうするのか。監督は、戦術だけではなく、かなり細かいことまで試合から逆算して、可能な限り多くの項目をクリアにしておかなければならないのです」

いかに選手を万全の状態で試合に臨ませることができるか。いわば、監督の仕事の大部分は試合が始まる前に終わっているのだ。そして、この準備こそが“勝ちそうな国”と“勝つ国”の差になっている。1974年以降、W杯で優勝したのは、ブラジル、イタリア、フランス、ドイツ、アルゼンチンの5カ国しかない。毎回、他の国の代表も下馬評に上ることはあるが、結局は勝てない。ピッチ上だけでなく、大会を通じて高いパフォーマンスを保つノウハウのある国だけが最後まで勝ち抜くことができるのだ。

強い組織をつくり上げることが監督の役割であり、それは企業のトップと似ている、と反町氏は言う。