「予測と制御」はもはや通用しない

私が提案したいのは、「地球の歴史」から導かれる新しい方法論だ。前もってすべてを計画し準備しようとするのではなく、突発的な出来事に柔軟に対応する「しなやかさ」を持つこと。その手本となるのは、地球上の生命が38億年という長い間に採用してきた、ある「戦略」である。

自然界には同じことが繰り返し起きる「可逆現象」と、同じことは二度と起こらない「非可逆現象」がある。地球上の現象は全て非可逆現象であり、時間とともに変化する。

そして非可逆的な世界で生き延びるには、「いまあるものを使う」という戦略が重要だ。すなわち、今と同じ状況が将来も再現される保証がないため、目前の機会を逃せば永遠にチャンスは訪れない。したがって、既にある能力を「とりあえず」活かして、何とかやってみるのだ。

多くの読者は「あるものを使って、とりあえず凌ぐ」やり方に不慣れである。その結果、旧来のビジネス書が押しつけた「理想の姿」から自分を引き算することに疲れ果てた。よって、さらに尻をたたいて発憤させるのではなく、「とりあえず凌ぐ」方法論が有効なのだ。

そもそもビジネス書が売れなくなったのは、ガチガチの「予測と制御」を人生に持ち込んだことによる「制度疲労」なのである。たとえば、「3.11」をはじめとして地震予知が成功しなかったように、従来のシステムに固執していては、今後も「想定外」に振り回されるだけだ。