「新卒一括採用」「年功序列」が障害?

「具体的には、研究者向けとしての仕事紹介だけでなく、キャリアコンサルティング、セミナーなどを考えています。一方、企業向けには人材紹介にとどまらず、新規事業立ち上げの支援、そのための共同研究開発のパートナー探し、プロジェクトの構築を行います。いずれにして、両者とも意識改革が必要でしょう。研究者は大学にしがみつかず、企業での社会貢献を視野に入れること。企業には彼らの総合力を再認識してほしいと思っています。特に企業と大学との人材交流がうまく回る世界がこれからの社会に必要になると考えています」(倉本氏)

日本企業、とりわけ大手メーカーには新卒一括採用、年功序列という考え方が依然として根強い。つまり、人材は会社で育てるから、あえて博士号を取得した30歳前後の人たちの採用は必要ないということだ。そこには、博士はプライドが高く、専門領域のことしかできないという偏見がある。けれども、専門の学会でプレゼンテーションを何度か経験し、英語で論文を書くといったスキルは、数カ月の訓練でビジネス上の大きな武器になるはずだ。

また、そうしていかないと、世界における日本の競争力は上がっていかない。アベノミクスは、円安と株価上昇で一定の支持を得ているものの、それは“3本の矢”の第1と第2の矢、すなわち金融緩和と財政出動によるものだ。日本経済の将来を考えれば、第3の矢である成長戦略こそ実現しなければならない政策だったはずだ。が、残念ながら具体的な成果はまだ目に見えていない。

「最近の共同研究のトレンドはロボットやIT、なかでも人工知能や画像認識技術に動いています。これらの技術を集めたものが自動運転車。私たちは、これらの深い知識と高い技術を持った研究者を探し出し、企業とマッチングさせ“知の対流”を起こしたいと考えています。これらの分野は主に情報・工学系の研究者ですが、ここに来て話題になっているビッグデータは理学、社会学系の人材も不可欠。と同時に、企業は大手だけでなくベンチャーもターゲットになるということです」

こう力説する倉本氏は、時間はかかるとしながらも、研究者と企業の母集団を増やしていくことによって、この事業が一気に加速すると確信している。

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