何となく、過去のフォーマットをコピペして作っていないか? 数字やデータを並べただけで満足していないか? 必要なのは次のアクションを生む文書だけ──これが一流企業の常識だ。

日々環境が変化し、スピードが重視される通信業界。それは会議の場でも同様である。KDDI広報部で商品のプロモーションなどを担当する米原浩之さんは、資料確認用のパソコン、メモ用のタブレットを用意して会議に出席。「議事録の担当になったときは、リアルタイムでつくっていきます。会議が終わったらその場で出席者に一斉送信。それから席に戻ることが、自分に課しているミッションです」というから、その速さは只事ではない。

「経験則として、時間をかけて議事録をつくりこんでも読まれないことが多い。それよりも決まったことを即座にアウトプットして、まずは情報共有。さらっと読んでもらって、もし認識違いがあった場合はメールの返信で修正してもらうほうが、実効性が高いように思います」

米原さんは会議中、最終的にA4の用紙でおさまるぐらいのボリュームを想定しながら、その場で要点を機器に打ち込んで編集していく。自分も会議に参加しながら打つので、全部の発言を拾おうとは最初から考えず、不要だと思った話は記録しない。たとえ記録しそこなっても大事な案件なら繰り返し話題になるから不安はないという。注意しているのは、議事録=発言録にならないようにすることだ。

「資料を見れば担当部門の主張は大体わかるし、会議は参加者が同列で責任を持つべきものなので、誰が発言したかという事実は重要ではありません。大事なのは会議で決定したタスク、つまり宿題事項です」

「議事録で一番重要なのは、迷いなく次のアクションを起こせること」と考える米原さんは、議事録の序盤にタスク、結論を提示するようにしている。

作成した議事録を見せてもらった。意外なことに、文章はメールにベタ打ちである。なぜかといえばテキストファイルは文字の大きさ、色、罫線など、様々な設定が選べるため、見せ方を工夫しようとつい時間をかけてしまう。またテキストファイルをメールに添付すると、開くひと手間が入ってスピードが落ちるから――。通信業界ならずとも、この速さへのこだわりを見習いたい。