主人公は画家

1947年、東京都出まれ。漫才、司会、作家、画家、そして映画監督とマルチな才能を発揮する。初監督作品は89年の『その男、凶暴につき』。その後98年の『HANA-BI』でベネチア国際映画祭・金獅子賞受賞。2003年の『座頭市』でベネチア国際映画祭・監督賞受賞。05年から東京芸術大学大学院映像研究科で講座を持つ。自ら脚本・編集・主演も兼ねる最新作『アキレスと亀』は9月20日よりテアトル新宿ほか全国ロードショー。
1947年、東京都出まれ。漫才、司会、作家、画家、そして映画監督とマルチな才能を発揮する。初監督作品は89年の『その男、凶暴につき』。その後98年の『HANA-BI』でベネチア国際映画祭・金獅子賞受賞。2003年の『座頭市』でベネチア国際映画祭・監督賞受賞。05年から東京芸術大学大学院映像研究科で講座を持つ。自ら脚本・編集・主演も兼ねる最新作『アキレスと亀』は9月20日よりテアトル新宿ほか全国ロードショー。

今度の映画(『アキレスと亀』)は売れない画家を主人公にしたもの。どうして画家をテーマにしたかと言えば、自分自身で描いた絵がたくさん置いてあって……。だからといって、捨てるわけにはいかないし。何点かは人にあげたんだけれど、それもねえ。それで自分の描いた絵を使って映画を撮ってみようと思った。

これまでオレの映画はちょっとひねくって作っていたから、なかなか当たらなかった……。オレの感覚が悪いのか、それとも客の感覚が悪いのかと疑っていたのだけど、ふいに、ちょっと待てよと思った。そういえばオレが撮っていたのは本筋から外れた映画ばかりだった、と。じゃあ、今度こそは本筋の映画をやろうと思って撮ったのが『アキレスと亀』。

画家を主人公にした映画はこれまでにもいくつかあった。ゴッホとかモジリアニを主人公にした映画が知られているけど、いちばんの問題は映画のなかにほんものの絵を使っていないこと。そりゃ60億もするゴッホの絵を撮影現場に持ってくるのは、ハナっから無理なんだけれど、ニセモノの絵が映ると、どうしても観客にわかっちゃう。絵の質感が違うし、ましてゴッホの絵なんて、みんなが知っている作品でしょう。ニセモノを見るだけで観客はしらけちゃう。

つまり、画家の映画って、本物の絵を使えないところに問題があったんだ。ところがオレなら自分で絵を描いているし、監督もやれる。それで、自分で描いた70点くらいを映画に使った。

ただし、アンディ・ウォーホルやロイ・リキテンスタインのパロディ絵画は美術さんが作ってくれた。アンディ・ウォーホルがマリリン・モンローを使った作品は、代わりに美空ひばりさんと横山ノックさんにして、キャンベルのスープ缶の作品は鯨の缶詰に替えた。絵の好きな人はあのシーンでちょっと笑うだろうね。