消えた年金騒動に火がついていたころ、私はきちんと納めているのだから記録が漏れるなどということは考えもしなかった。まさか自分が渦中にいるとは想像もしていなかった。ところが、わが家にも青い封筒の「ねんきん特別便」が来たのである。

待てよ。転職2回、転居5回だ。どこかで記録が抜けてしまったのだろうか。封筒をあけながら不安になってきた。しみじみと眺めてみる。

最初に入社したサイマル出版会の入社日と、厚生年金基金加入日との間に3年6カ月の「第1の空白」がある。そして、退社した日から2つ目の会社に入社した日の間にも約半年間の「第2の空白」があった。「第2の空白」はプータロウ期間だが、たしか国民年金への移行手続きをした記憶がある。これはえらいことになった。人任せになんかできないぞと愕然とした。

8月4日、セミしぐれの中を市ヶ谷駅から千代田社会保険事務所に向かう。私の目は釣りあがっていたに違いない。受付で青い封筒が来たことを告げると、すぐ通された。特別便と年金手帳を見せると、端末を叩いた担当者が、「あ~、62年7月1日から63年1月25日の間に国民年金の記録がありますね。手帳があったので行方不明の記録がすぐに見つかりました」

よかった! 特別便の空白のプータロウ期間とぴったり合う。第2の空白はつながった。しかし、なぜこの記録が行方不明になったのだろうか。

「平成9年1月以降は年金番号を一元化していますが、それ以前は加入する制度ごとに記録を管理していたんです」

何ということだ。最初から一元化しておけばいいではないか。記録がつながったおかげで、公的年金の加入期間が302月となり25年を超えたので、晴れて受給資格者になった。これからは、積み立てた分だけ受取額が増えていくのだそうだ。ひと安心。さーて、残すは第1の空白期間の問題だ。

「ここは記録が抜けているのではなくて、そもそもあなたの会社が厚生年金基金に加入していなかったのです」

なんですと?