図2:B/Sは「右で調達、左で運用」と考える

図2:B/Sは「右で調達、左で運用」と考える

では、それぞれをどう見るか。B/Sには「どうやってお金を集めて(調達)」「何に投資しているのか(運用)」が示される(図2)。調達を示す右側と、運用を示す左側の大きさが等しいことから、バランスシート(B/S)と呼ばれている。簿記的には右側を貸方、左側を借方と呼ぶが、それは気にしなくていい。

資金調達には、自分でまかなう(自己資本)方法と、他人から借りる(他人資本)方法がある。B/Sでは、返済義務のある他人資本を「負債」、返済しなくていい自己資本を「純資産」と呼ぶ。

右側で調達された資金は、左側の資産に投資され、「在庫→売掛金→現金→在庫」といった流れで循環する。右側から流れ込んできたお金が、左側でグルグル回っている。この「調達と運用」のサイクルが、B/Sの構造となる。

B/Sを見る際のキモは“グルグル”、つまり「投資とリターン」のサイクルがうまくいっているかどうかにつきる。それを判断するために、いいB/Sと悪いB/Sのイメージをつかんでおきたい。

いいB/Sは、右で調達した資金より左の資産が拡大している。よって、右下に利益剰余金(+)を置いてバランスをとる(図2)。投資の結果、商売がうまくいったことがわかるだろう。

悪いB/Sでは、右で調達した資金より資産が減り、目減りした分の利益剰余金(-)を左下に示す。最悪の場合は、資産が大幅に目減りし、資産が負債より小さくなる。この状態が債務超過だ。

図3:P/Lは「儲けの構造」と考える

図3:P/Lは「儲けの構造」と考える

次はP/Lを見ていこう。P/Lの基本は「収益―費用=利益」。儲け(利益)の構造を示す内訳明細書のようなものだ(図3)。

売り上げから売上原価(仕入れ・製造にかかるコスト)を引いたのが売上総利益。そこから販管費(販売・管理にかかるコスト)を引いたのが営業利益。つまり本業で稼いだ儲けとなる。

さらに利息や受取配当を加算・減算(営業外収益および営業外費用)したものが経常利益。特別利益(損失)を加減し、法人税を差し引いたのが最終的な当期純利益となる。

図4:規模で勝るアサヒビールと剰余金が潤沢なサントリー[B/S比較]

図4:規模で勝るアサヒビールと剰余金が潤沢なサントリー[B/S比較]

この2つの決算書は、ライバル会社あるいは同じ業界内で比較すると、会社の特徴や課題が見えてくる。

ここでは同業界で売り上げ規模がほぼ同じレベルのアサヒビールとサントリーを見てみよう。売り上げ規模が同じということは、会社の規模や認知度がほぼ同程度と判断できる。が、利益構造には大きな差があることがわかる。

まずはB/Sを比べてみよう(図4)。上場会社のアサヒビールと非上場会社のサントリーで、株主出資に大きく差があることがわかる。そして注目すべきは、利益剰余金だ。サントリーでは、利益剰余金の割合が非常に大きくなっており、これまでのビジネスがうまくいったことが見てとれる。