今回の改正労働基準法のもうひとつの目玉は、有給休暇を時間単位で取ることのできる制度の導入だ。労使協定を締結すれば、年に5日を限度として、時間単位で有給休暇を消化することができるようになる。たとえば保育園の送り迎えなどで、少し遅く出社したい、あるいは少し早く退社したいといった場合を想定している。

有給消化率アップを期待されている制度であるが、実はこの仕組みにも問題がある。まず、企業側が労使協約の締結に消極的なこと。

「寝坊したから1時間有給といったように安易に使われることを懸念する会社が多い」(同)

時間単位の有給休暇を管理するために社内システム変更が必要なことも、導入をためらわせている。加えて多くの企業には、すでに午前、午後いずれかだけを休みとする「半休」制度が設けられている。これは、実は労働基準法上認められていないにもかかわらず、現実にはお咎めがないという不思議な制度だ。

以上のように、今回の改正労働基準法に多くは期待できないようだ。では、どのような法規制なら現実的なのだろうか。

「労働者の最低限の睡眠やプライベートの時間を確保するため、たとえば『休息12時間』と定めた企業では、夜10時まで残業した場合、翌日は朝10時まで出社を許さない『休息時間』制度の導入を検討することなどが必要だろう」(同)

(ライヴ・アート= 図版作成)