EU司法裁判決の波紋

ところがEU司法裁判所は2014年5月、自分の過去の報道(新聞記事)内容に関するリンクをグーグルの検索結果から削除するよう求めたスペイン人男性の訴えを認める判決をした。「忘れられる権利」を認め、グーグルに「過去の報道内容に関するリンクを検索結果から削除する」よう命じたのである。

検索サイトはオリジナルな情報を提示しているわけではなく、インターネット上のさまざまな情報を検索してリンク(表示)しているだけである。違法、あるいは不適切な情報があふれているとしても、それはサイバー空間全体の姿なのである。しかし検索サイトの強力な機能と現実での役割を考えると、検索サイトに表示されない情報は、たとえサイバー空間上にあっても利用者からは実質的に見えなくなる。だからEU司法裁判所は、オリジナル情報ではなく、検索サイトでの表示の削除を検索サイトに命じた。オンライン上の「忘れられる権利」は「検索サイトのリンクから外す」という、言わば対症療法的な解決へとシフトしたと言っていい。

グーグルは当然、この判決に遺憾の意を表明したが、EU最高裁の判決で上訴はできないために、欧州の利用者を対象に検索結果に含まれる自分の情報に対する削除要請を受け付けるサイトを設けた。さらに同社幹部や外部の専門家で構成する委員会を設けて対応の検討を始めた。

現在、ウェブ上に掲げられている「削除ポリシー」には「Google は、世界中の情報を体系化したいと考えています。しかし、ウェブのコンテンツには取り扱いが難しいものやすべてのユーザーに表示するには適切ではないものがあります。このページでは、Google がウェブ、画像、動画の各検索結果から削除する各種コンテンツに関するポリシーについて説明します」と書かれている(https://support.google.com/websearch/answer/2744324?hl=ja)。実際に削除作業にも入っており、日本の後者の例では、裁判所から削除を命じられたリンクの削除も進めているようである。

今回のヤフーの措置はこういった歴史的経過のうえにとられている。