お客さんの思い出の一部になれる仕事

外部の調査会社とも協力しながらマーケティングリサーチの手法を積み重ねていく中で、大きな発見がありました。それは、カルビーの商品はお客さんの思い出に入れる商品だということです。昔、お母さんに遠足のおやつでかっぱえびせんを買ってもらったとか、学校で友達とじゃがりこをまわしながら食べたとか、カルビーの商品はお客さんと一緒にいられる商品です。こういう商品はなかなかないので、大事にしていきたいと思いました。

一方で、お客さんは商品とメーカーが意外と一致しないものだともわかりました。「カルビーといったら何を思い出しますか」と尋ねてみると、ほかのメーカーの主力商品を答える方がおられます。お客さんはどの会社かなんて気にしていません。ならばより一層、お客さんのそばにいられるような商品の開発が重要だと思いました。

4~5年過ぎるまでひとりで自由気ままに仕事をやらせてもらえました。それはよかった面と悪かった面があったと思います。マイナス面を言えば独善的になってしまったことでしょうか。1人、2人とメンバーが増える中で、自分が単独でカルビーのマーケティングリサーチを作り上げてきたという自負があり、すべて自分が思う方向に進めたいとか、メンバーが私の意に反する動きをするとイラッとしたり、知らず知らずのうちに全部を管理したいという気持ちになっていたのです。そして上司ともぶつかるようになってしまいました。

大下明文=構成 山口典利=撮影