転職できる人材とは

それではどんな人材が「転職市場で強い人材」なのでしょうか?

「スペシャリティを持った人です。エンジニア、デザイナー、プログラミング、または営業に強い人が求められています。そして武器は『アウトプット』がある人。ぜひ女性は転職の条件交渉で使える『武器』を持ってほしい。20代でも『語れる実績』を作ることが圧倒的に大事です」

松本さんいわく武器とは「営業実績」「プロジェクト実績(自らが主体となったもの)」「企画の実績」などです。

松本さんの話を聞きながら、欧米では当たり前の実績ベースで転職しながらキャリアアップしていくという働き方が、だんだん見えてきているような気がしました。その働き方も、自分のライフスタイルに応じて選べるようになるのです。

「この流れは一時的なものではなく止まりません。少子化で労働力は不足するので必然的に進んでいく。僕がこの起業をしたのは、今起きている働き方の『地殻変動』とも言える動きを速めたいから。女性が働きやすい社会の実現を5年かかるところを3年にしたい。今、働く女性たちに言えるのは『残る』ことも『転職する』ことも、どちらも有りだということです。でも不満を持って居続けるのはよくない。より良い企業に人が集まるという競争原理は働くべきです」

取材を終え、松本さんと私が同じものを見ていることがわかりました。私も「大量のワーキングマザーの出現」は「お荷物」でもなんでもなく、「彼女たちが中心となって、働き方の革命が起きる」と思っています。それは、男女ともに働きやすい世界の実現につながっていく。

転職するという道が整備されてきた以上、育ててきた優秀な女性たちが社外に流出せず、「管理職」への道を歩んでもらうにはどうすればいいのか?

「報酬」もしくは「時間の自由、働き方の自由」を保障するのはどうでしょうか?

そうすれば「管理職になりたい」とモチベーションの上がる人も出てきます。多分女性だけでなく男性にとっても魅力的でしょう。自分の時間をめいっぱい使って疲弊するまで働き、パワーゲームをし、さらに上にいって「見える昇給」があるかどうかは賭け……そんな中間管理職像には、男女ともに魅力を感じない時代となっています。

「女性が管理職になりたがらない」と嘆くより前に「どうしたら、魅力的な管理職像を描けるか」ということを視野に入れてほしい。転職サイトの活況は、まさにその必要性を物語っているのです。

LiB代表取締役
松本洋介
明治大学卒業後、2003年にリクルート入社。タウンワーク、ホットペッパーでは全国営業MVPとして受賞歴多数。新規事業開発室にてエルーカ創刊に携わった後、07年「東証マザーズへの上場実現」をミッションとしてトレンダーズにCOOとして入社。12年営業取締役として東証マザーズへの上場を実現。14年4月LiB創業、代表取締役就任。

白河桃子
少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授、経産省「女性が輝く社会の在り方研究会」委員
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。「妊活バイブル」共著者、齊藤英和氏(国立成育医療研究センター少子化危機突破タスクフォース第二期座長)とともに、東大、慶応、早稲田などに「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座」をボランティア出張授業。講演、テレビ出演多数。学生向け無料オンライン講座「産むX働くの授業」も。著書に『女子と就活 20代からの「就・妊・婚」講座』『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』『婚活症候群』、最新刊『「産む」と「働く」の教科書』など。