待機児童数の定義が変わった理由
2001年に、国はなぜ待機児童の定義を変更したのか、その理由は明らかです。東京都の認証保育所制度が開始したのが2001年でした。このとき、自治体が独自に補助金等を出して行っている保育事業(認証保育所、横浜保育室、その他、自治体によって補助額や基準はさまざま)に入れた子どもは待機児童数にカウントしなくてもよいことになったのです。
当時「自治体の独自施策も認めよ」という議論が渦巻いていたことが想像されます。もちろんその主張にも一理あります。
でも、保護者にとっては、認可(保育所)と認可外(認証保育所など)ではまったく意味が違います。保育料や施設環境などはどうしてもネックになるからです。保育所に入れなかった人数はきちんとカウントしてほしい、その不満を「リンゴがほしいという人にミカンを渡して、リンゴはいらなかったことにするというのはいかがなものか」と表現した保護者もいました。
広がる「待機児童数の空洞化」
「横浜方式で待機児童ゼロ」フィーバーから1年がたった今年の6月23日、東京新聞は独自調査により、政令都市の多数が待機児童から「育児休業中(延長中)」「求職中」「自治体が助成する保育事業の利用を断った」などのケースを除外していることを報道しました。その中には「待機児童ゼロ」を宣言した自治体もあったと言います。
さらに、図2は、東京都の保育所についての公表数値をグラフ化したものです。紫の折れ線が待機児童数の公表値。緑の折れ線は申込者数合計(進級児を含む)と定員合計の差です(自治体発表数値で注意しなければならないのは、申込者数に進級を申請した児童が含まれていること。申込者数とは、在園児と新規申込み児童の合計になる)。つまり、緑の線はほぼ「保育所に入園申請したけれども入れなかった子どもの数」と考えられます。
紫の線と緑の線はどんどん乖離しており、待機児童数の公表値の空洞化が顕著です。認証保育所などの利用児童数がふえていることが最も大きな原因ですが、いろいろな理由をつけて待機児童数から除外するワザも広がっているのです。