「小さな成功体験」の積ませ方

マネジメントは引っ張るばかりではなく、時には寄り添ったり、後ろからそっと押してあげたりするやり方も必要です。思うように成果が出ずに焦る部下に対しては、今値上がりしている銘柄があればその理由を一緒に考え、これから値上がりしそうな銘柄を見つけて理由付けしてみます。そして、部下が担当しているお客様の資産に当てはめてみて、実際に運用が好転すれば部下は次のステップに上がってくれます。その時はきちんと褒めてあげて、小さな成功体験を積ませるのです。

部下とのコミュニケーションという意味では、よく飲みに行きました。今でも週に1回は現在の部下と飲みますし、半期に1回はかつての部下と出かけています。

私の今の目標は、1日も早くこの新本部を1人立ちさせることです。そして、この会社を後輩たちにしっかりと手渡していきたいと思います。

役員になってからは本もよく読むようになりました。最近は米フェイスブックのシェリル・サンドバーグCOOの書籍や早稲田大学の谷口真美教授のダイバーシティマネジメントに関する本。アレキサンダー大王の自軍の強みを発揮する方法が書かれた書物などは何度も読み返し、私なりに強いけど血の通った組織のあり方を考えています。また、資産の運用・管理のスキルを一層磨くのはもちろん、音楽や絵からワインに至るまで教養を深める勉強もしています。

仕事も子育ても貪欲に

私の仕事道具:「日経ヴェリタス」は手放せない仕事道具。重要な箇所にはマーカーを引き、常に持ち歩いている。

これから管理職になろうとしている女性たちにはためらいもあるでしょう。正直、私の時代はフルに仕事をし、子育てもするという選択肢はありませんでした。しかし、今はワーク・ライフ・バランスの施策もずいぶん整ってきました。仕事も子育ても両方を貪欲に追い求めてもらいたいと思います。

確かに昇進や組織のマネジメントは簡単ではないですが、見えてくる景色が違ってきます。より高い視点でワイドに会社が見えてきます。私の部下にも「私なんて」「とても管理職なんて」という女性がいます。でも、彼女達にはいいところがいっぱいあるんです。ですから、「あなたの部下になれる人は幸せなんだよ」と言って、刷り込んできました。今では彼女達も立派な管理職に成長しています。これからは、彼女達とともに、1人でも多くの次世代の人材を育ててゆきたいと考えています。

大下明文=構成 山口典利=撮影