漢字をくりかえし書き写す勉強には意味がある

では、漢字の読み書き能力と読解力の相関は、なぜ高いのか。

飯田一史『「若者の読解力低下」というウソ』(インターナショナル新書)
飯田一史『「若者の読解力低下」というウソ』(インターナショナル新書)

漢字が苦手なひとは「この漢字、なんて読むんだっけ?」「どういう意味だっけ?」「どう書くんだっけ?」といったことに脳のリソースが割かれてしまう。そうすると、本来とりくむべき課題である、文章の意味理解や推論に使える力がなくなってしまうのである。

「人間の注意力や集中力は有限だ」という話を聞いたことがあるひとは多いだろう。また、人間は本質的にマルチタスクに向いていない。あれこれ同時にこなそうとすると、慣れていない作業ほどパンクしやすい。だからこそ、漢字の認識が苦もなくできるようにならないと、文章の理解や文脈の把握にちゃんと頭を使えるようにならないのである。並行してふたつ、3つのことにとりくむのはたいへんなのだ。

というわけで、漢字を書く能力に困難がない場合は、まずはくりかえし書いておぼえるべきである。漢字をすらすら読み書きできれば、読解問題にとりくむときに「あの漢字のかたち、どんなんだっけ?」などと思い出すことに労力を割かずに済む。読解に集中できる。

もちろん、漢字練習だけすれば読解力が自動的に上がるわけではない。漢字をおぼえるのと並行して、文と文の関係を正しく理解し、自分でも正しい文章をつくれるように練習をしていく必要もある。