家庭の蔵書数と学力は相関する

約9〜12%という説明率は、関係の強さを表す「相関係数」に換算すると、r=0.30〜0.35程度。これは統計的には「まあまあ関連がある」「関係がありそうだが、かなり多くの例外がある」くらいのものだ。

一方で、読解リテラシーのスコアと、語彙力や認知能力の相関はr=0.7前後。これらと比べれば、PISAのスコアとSES(親の社会経済的地位)との結びつきの度合いは半分以下である。

ちなみに、SESの代替指標として広く用いられているものに「家庭の蔵書数」がある。「あなたの親(家庭)は社会的な地位が高いですか。カネ持ってますか」などと質問してSESを直接測定するのはむずかしいし、さしさわりもある。

だから家に本がたくさんあれば、親の社会経済的な地位も高く、その家庭の教育・文化的な環境を反映してもいるだろうという推定のもと、代わりに指標にしているのである。

本の詰まった本棚
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PISAや全国学力・学習状況調査では、家庭の蔵書数は学力とのあいだに一貫して正の相関が確認されている。蔵書数が多い家庭の子どもは、少ない家庭の子どもよりも平均正答率が高い傾向にある。

ただ、蔵書数は純粋な環境要因というより、親から子へと受け継がれる遺伝的・文化的形質としての側面もある。多くの場合、親自身の高い知能や知的好奇心といった遺伝的要因が「家に本を置く」という環境づくりにつながっているからだ。

ただもちろん、高い読解リテラシーになりうる資質を持っていても、お金がなく、親が本に興味がない家庭に生まれる場合もある。

そういうときに学校や図書館、書店そのほかを通して本にアクセスでき、読書や学習を後押し・支援される環境があれば、環境に起因する能力差は埋められる。くりかえしになるが、やる気と素質さえあれば能力を伸ばせるような機会・場を社会が用意することは重要だ。

成長するほど「環境<遺伝」になっていく

先ほど少し触れたように、語彙や文法の知識は読解力と高い相関がある。

なお、語彙力の遺伝率は乳幼児期には低い。親の関わりや保育環境などの環境要因のほうが影響が大きい。日本の42カ月(3歳半)の双生児を対象とした研究では、聞いたり読んだりしたときに、意味を理解できる言葉を表す「受容語彙」の個人差に対する遺伝の影響はわずか7%。家庭などの共有環境の影響が51%を占める(*2)。

*2 Fujisawa, K. K., et al. (2013). “A Multivariate Twin Study of Early Literacy in Japanese Kana.” Learning and Individual Differences, 27, 140-146.

ただ、言語などの能力における遺伝の影響は年齢とともに大きくなり、逆に共有環境の影響は減る。英国の双生児を対象とした大規模研究では、10歳時点の国語の成績に対する遺伝率は60%。成長するにつれ、能力の個人差の半分以上が遺伝で説明できるようになる。