語彙力がなければ読解力も伸びきらない

日本人の小学生を対象とした調査でも、語彙力と読解力の相関は一貫して高い。ただやはり、その相関係数(関連の強さ)は小学校1・2年生でr=0.79、小学校3・4年生でr=0.70、小学校5・6年生でr=0.66とやや下がっていく(*3)。

*3:猪原敬介、上田紋佳、塩谷京子、小山内秀和「日本人小学生児童における読書量・語彙力・読解力の関係」日本教育心理学会第55回総会、2013年

低学年では「言葉を知っているかどうか」が読解のテスト(国語の試験)を受けた際にダイレクトにボトルネックになるが、高学年になるとそれにくわえて推論する能力や、その文章に書かれていること以外の背景知識の活用も求められる。結果、相対的に語彙単体の重要度が下がるのだろう。

ただ、それでもrが0.6より大きいというのは、強い相関だ。言いかえれば、土台となる語彙、そして知識がない状態で、読解のテクニックだけを教え込んでも点数アップには限界がある。

「読み」は遺伝、「書き」は環境が影響大

日本人を対象にした漢字の読み書き能力に関する遺伝の研究は見当たらないが、中国の双生児研究によれば、漢字の単語の読み能力などの遺伝率は約42〜73%と中程度から高い水準のようだ。

しかしながら、漢字の構造や配置などを理解する能力に関する遺伝率は低い。むしろ共有環境の影響が高く推定されている(*4)。意訳すると「読み」は遺伝の影響が大きく、「書き」に関わる力は環境の影響が大きい。どういうことなのか。

*4: Chow, B. W.-Y., et al. (2011). “Genetic and Environmental Influences on Chinese Language and Reading Abilities.”

漢字は、アルファベットなどと比べると見た目が複雑だ。「語」と「悟」のように一部分は共通しているが、一部はちがうという文字が無数にあり、パーツの膨大な組み合わせで成り立っている。そんな文字を何千もおぼえなければいけない。

どうやっておぼえるのか? 文字のかたちや正しい構造の知識を獲得するためには、くりかえし書き写す学習方法が一般的だ。たくさん書けばおぼえるし、一切書かなければなかなかおぼえられない。

しかし、放っておいても漢字の書き取りを一生懸命する子どもは、まれである。ゆえに、周囲の大人からの働きかけや学習環境といった環境要因の影響が強く出ると考えられる。