なぜゲームがやめられないのか

20代前半の聡明で思慮深い青年が、ひどい不安とうつを訴え、私のところにやってきた。彼は大学を中退し、実家で暮らし、漠然と自殺を考えている状態だった。毎日テレビゲームばかりやっていて、夜遅くまでやめられないでいた。

夜に部屋でビデオゲームをプレイする10代の少年
写真=iStock.com/Motortion
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20年前ならこのような患者にはまず抗うつ剤を処方しただろう。しかし今日ではまったく異なるものを勧める。ドーパミン断ちだ。私は、彼に1カ月間完全にテレビゲームをやめるように言った。

「はい??????」と彼は言った。「なんでそうなるんですか?! ゲームをやっているときだけ安心できるのに」

次のように説明した。楽しいことをするとき、この場合ならテレビゲームをするとき、脳は報酬にかかわる神経伝達物質、ドーパミンを少し放出する。それでいい気分になる。

しかし過去75年間の神経科学分野で最も重要な発見は、快楽と苦痛は脳の同じ領域で処理され、脳は両者のバランスを必死に保とうとするということなのだ。

快楽→苦痛→快楽を求める、の繰り返し

バランスが一方に傾くと、脳は中立状態に戻そうとして(神経科学者が「ホメオスタシス(恒常性)」と呼ぶ働き)、反対方向に傾けようとする。

ドーパミンが放出されるとすぐに、脳はそのドーパミンの増加に適応し、ドーパミンに刺激される受容体の数を減少させる。「ダウンレギュレーション(下向き調整)」をするのだ。苦痛の側に傾けることで脳はバランスを回復させる。

快楽の後には二日酔いや気分の落ち込みを味わうものだろう。充分に待てば嫌な感覚は消えていき、戻る。しかしその嫌な感覚を早く消したいがために、待つのではなく、快楽の源のところへ戻ってしまうことがよくある。

それを毎日何時間、数週間、数カ月間と繰り返すと、脳の快楽に対する基準点が変化する。すると今度は、快楽を感じるためではなく、ただ普通でいるためにテレビゲームを続けなければならなくなる。

そして、やめた途端、普遍的な依存の離脱症状、すなわち不安、イライラ、不眠、不快感、依存対象のことだけしか考えられなくなるという渇望を経験することになる。

つまり、快楽の飽くなき追求は「無快感症」――あらゆる快楽を全く感じられなくなる状態――をもたらす。だからこそ、快楽を与える物質や行動を一定期間断つことで報酬回路がリセットされ、喜びを感じる能力が取り戻せるのだ。