「衆参両院議長は時の首相が決める」

参院のドンである石井氏の更迭については、微妙な空気も永田町に漂う。

参院自民党の人事は、党参院議員による選挙で選ばれた参院議員会長が、参院幹事長ら幹部を任命する仕組みが党則で定められている。これまでは総裁も権限を持てない「聖域」だとされてきた。

だが、高市首相はそこに手を突っ込んだ。松山政司参院議員会長(旧岸田派)に圧力を掛け、かねて溝があった石井氏を執行部から追い出してしまった。

形の上では、松山氏が9月15日の党役員会後、党本部で石井氏に再任しないと告げ、後任の参院幹事長に青木一彦前参院議院運営委員長を就けた。かつて参院のドンと呼ばれた青木幹雄元官房長官の長男で、石破茂政権で官房副長官を務めている。

首相は16日、この人事について「参院の役員人事は私にはない。参院会長が決めたと承知している」と記者団に語った。松山氏も記者会見で「総合的に私が判断した。官邸がどうこう言うことはない」と説明し、周辺には「体調を考慮した」とうそぶいたが、額面通りに受け取る向きはいない。

岸田元首相に近い筋はこう解く。「松山氏は参院議長を狙っている。衆参両院議長は時の首相が決める。高市政権が続くと見て、首相に忖度したのだろう。松山氏と石井氏を比べたら、石井氏の方が上なのだが……」

安倍晋三政権以降、ここ数代の首相や官房長官は、石井氏の国会対策の力量を買ってきた。麻生氏も首相との人事をめぐる協議で「石井氏を残すべきだ」と進言していた。

国会議事堂
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「総裁選対応で縛りをかけない」

高市首相が石井氏の国会運営に不満を持ったのは、3月初めに「(2026年度)予算案を3月13日に衆院を通過してくれれば、年度内成立が可能だ」と見通しを示したにもかかわらず、実現できなかったことだとされている。

石井氏は、少数与党の参院で国民民主党の賛成が条件だと付言したが、坂本哲志衆院予算委員長(当時)が職権による日程設定や採決の強行を連発したため、国民民主党が離反し、「荷崩れ状態」で参院に送られてきたことにそもそもの原因があった。しかも、木原官房長官が衆参の国対委員長らを呼んで石井氏の話の裏を取らないといけないのに、その確認作業を怠ったというミスも重なった。

だが、首相は、自分が指示した年度内成立がかなわなかったのは、石井氏が参院審議で野党と組んで、成立を引き延ばしたせいだと思い込んだ。逆恨みである。

石井氏にすれば、首相が衆院選を2月に断行したことで予算成立が4月にズレこんだだけで、政府提出法案は100%成立させ、最終盤で副首都構想関連法も成立に持ち込んだのだから、感謝されこそすれ、恨まれる筋合いはないという気分だった、と報じられている。

石井氏はこの直後、自らの政治力を誇示する行動に出た。4月15日に40人超が参加する自民党参院クラブを結成したのだ。「総裁選対応で縛りをかけない」と説明したが、西田昌司、渡辺猛之両氏ら党参院議員100人の4割超を占める規模とあって、首相と松山氏の不興と警戒感を買うことになる。