治療院だけでは「放置」と「悪化」のリスク
柔道整復師の業務は、ケガの応急処置と急性期・亜急性期の対処です。けんばん断裂にも断裂直後の急性期がありますが、その時期に柔道整復師がギプスや副木、テーピングなどで固定したことで治癒率が上がった、という医学的な根拠は私が知る限りありません。医師として診察していても、そういう実感はありません。
もちろん、治療院で痛みが一時的に軽くなることはあります。固まった筋肉をほぐす施術で、一時的な効果があることは否定しません。
けれども、治療院だけに通うのは、何もせず、けんばん断裂をほうっておくことと同じです。けんばん断裂を放置すれば、断裂広大や脂肪変性が進む可能性があり、大きな断裂では修復不能になる恐れがあります。
整体で肩を押したり揉んだりしてもらったからといって、腱板の断裂が広がるような心配はありません。腱板は深いところにあるインナーマッスルで、手技の影響は少ないからです。ですが逆から言えば、悪化はしないものの、効果もないわけで、けんばん断裂は放置されたままだということです。
逆に、肩を動かされてしまう、もしくは診断もないままリハビリのようなものを指導されたりしてしまうことには、悪化のリスクが大いにあります。
つまり、けんばん断裂やそれが疑われる状態で治療院に通うことは、「意味がないリスク」と「悪化するリスク」の両方があるということです。
まずは整形外科へ、ただし診断を誤る医師も
「肩が痛い」「腕に力が入らない」と思ったら、まずは整形外科へ。きちんとした整形外科は、肩の痛みを訴える患者さんには、まずレントゲン、そして必要に応じて超音波検査やMRI検査をします。レントゲンと診察で「断裂はほぼないだろう」と判断できれば、MRIまでは撮らないこともあります。
ただし、残念ながら、医師であっても正しい診断ができないことが少なくありません。「五十肩なのか、けんばん断裂なのか」の識別ができない整形外科医もいます。
レントゲンを撮ることもなく、「五十肩だと肩を動かせる範囲が狭くなるけど、あなたの可動域は広いから五十肩ではありません。腱板がちょっと傷んでいるのかもしれません。腱板損傷ですね」と言って、湿布と痛み止めを処方するだけの整形外科医もいます。でも、これは肩を専門にしている私から見れば、とんでもなくいいかげんな診断で、いいかげんな治療です。
「肩が全然上がらなければけんばん断裂、上がれば五十肩」という診断基準を持っている整形外科医もいますが、肩が上がるか上がらないかで判断するのは、とんでもない間違いです。肩の上がるけんばん断裂もあれば、肩の上がらない五十肩もあります。重症な五十肩を「凍結肩」と呼ぶのですが、「凍結」と表現するぐらい硬くなった状態なのですから、当然肩は上がりません。

