女性だからこそできることがある

それこそ工場で働いていると、地元の高校を出たばかりの女性社員がいて、まだ右も左も分からない中で必死に仕事に慣れようとしています。中には入社以来、工場長とほとんど一言もしゃべったことがない、という若い社員もいる。

だからね、工場長になって全体を見回す立場になったいま、とりわけ強く思うんです。私が女だからこそ彼女たちの心に響く言葉もあれば、初めて相談できることもある。職場で感じてきたこと、これまで言えなかったことを、私だからこそ伝えようとしてくれる人たちもいる。それは私自身が気づいていなかった強みなんですよね。子育てが一段落して余裕ができたこともあって、いまはそんな風な心の余裕ができてきました。

それに、P&Gという会社の大切な価値観に、ダイバーシティ(=多様性)というキーワードがあります。様々な違いのある人たちが集まり、お互いの強みをお互いに生かしてチームを作るからこそ、「1+1」が3になるような組織になる。

そのためには、まず一人ひとりの社員が自己評価を正しくする必要があります。P&Gはグローバルな企業です。女性だから――と縮こまったり気負ったりしていては、国籍も生まれ育った文化も異なる人たちと一緒に、強い組織をつくることなんてできませんよね。

だからこそ、能力のある人はどんどん大きな責任を取って、男も女も関係なく昇進していこうとすればいい。女性だからできないことなんて何もない。自分が成長しようとし続けてさえいれば、組織の中で必ずチャンスはめぐってくるんだと、私は滋賀工場に来て実感しています。

●手放せない仕事道具 鏡
高級化粧品SK-IIを製造する工場の工場長として、お化粧や身だしなみには気を使っている。

●ストレス発散法 お風呂にゆっくり入ること

●好きな言葉Vision First (ヴィジョン・ファースト)

高木琴美(たかぎ・ことみ)
1990年にP&Gの生産統括本部に入社。2005年には同部門初となる女性で初めての高崎工場オペレーションマネージャーを経験。2012年から1年間シンガポールで洗濯洗剤のアジア担当アソシエートディレクターに就任。2013年に帰国後、日本人女性で初めてとなる滋賀工場長に着任。

稲泉 連=構成 水野真澄=撮影