理想と現実のギャップに悩む子どもたち
「もっと顔がかわいかったら、人生違ったかもしれない」
私のクリニックには、5歳から大人まで、さまざまな悩みを抱える方が訪れます。中には「生きるのがつらい」という大きな悩みを抱え、その一部として容姿への葛藤が現れるケースもあります。
特に小学校高学年から思春期にかけては、顔や体型などの外見に過度な関心を持ち、自分にダメ出しをする子どもが増えてきます。最近ではSNSやアイドル文化、画像加工アプリの影響で「理想の顔」と「実際の顔」とのギャップに悩み、「整形したい」と考える子も少なくありません。一度ネットで情報を調べると、関連広告が表示され続ける仕組みも、気持ちを強化してしまいます。
“万能感”が揺らぐのは“成長の証”
でも実は、自分の容姿に疑問を持ったり、他人と比べて落ち込んだりするのは、思春期の発達段階においてごく自然なことです。小学生くらいまでは、子どもは「なんでもできる!」という“万能感”を持っています。だから親の「かわいいね」「すごいね」といった言葉を無条件に信じることができます。
その万能感が薄れ、「自分は他人からどう見られているのか?」を強く意識し始めるのが思春期です。容姿に限らず、勉強や運動の能力なども比較対象となり、自己評価が揺らぐ時期でもあります。だからこそ、「自分は人と比べて劣っている」と感じることは、ある意味では“成長の証”とも言えるのです。
私がよく診察室で話すのが、お笑い芸人のフットボールアワー・岩尾望さんのエピソードです。「ブサイク」をネタにされることが多い岩尾さんですが、幼い頃から家族に「あなたはかわいい」「最高にカッコいい」と言われて育ったそうです。そのため、芸人になるまで自分の見た目をネタにされるとは思っていなかった、といいます。これは「あるがままの自分を肯定される体験」が積み重ねられていた証です。