0歳と5歳の子どもを連れて高崎工場へ
実際に工場で働き始めてからは試行錯誤の連続でした。
一つは家庭の問題です。私の高崎への赴任は夫を関西に残し、0歳と5歳の子どもを連れての赴任でした。子育てと仕事をどう両立させるかは、当初から大きな課題としてありました。
会社では当時から育児や妊娠中の働く女性に対する制度が充実していて、フレックスタイム制や時短、ベビーシッターさんをお願いする際の補助を利用することが出来ました。でも、やはり相手は仕事ですから、家庭を優先できないときも多い。私は仕事が大好きだったので、もともと「育児か仕事か」という考えはとりたくありませんでした。仕事を続けるためには、どのような子育てをすればよいか、という順番で生活のスタイルを考えたんです。
そこで決めたのが、「選択」をきちんとするという生き方でした。例えば、家の掃除一つについて考えても、それを毎日やろうとすれば、できなかった日に落ち込んでしまいます。だから、「月曜日から金曜日まで掃除はしません」と最初から決めてしまうことにしたんです。そして、土日にそれをすると決めたら、必ず実行する。
あるいは仕事と育児を両立させようとすると、どうしても自分自身をケアすることの優先順位が低くなってしまうものです。お友達と話をする時間、ショッピングに行く時間、お洋服に気を遣う時間……。ちょっと辛かったけれど、それもしないって自分で決めました。
本当はしたいのに、会社がこうだから、子供がいるから、と一つひとつを諦めていくのが嫌だったんです。「したいけれど、できない」のではなく、私がしないと決めた。だからしない。自分で決めたと思いさえすれば、とても気持ちがスッキリしますから。
そうしたやめる勇気を持つという働き方は、後々の自分の仕事に対する姿勢の多くを形作ってくれたと感じています。だから私、子育て中の生産性はすごく高かったと自分でも思うんです。今日、5時半に帰るためには、何をどの順にどこまでやらないといけないのか。それをしっかりと決めて、無駄と思えることをどんどんそぎ落とし、決めた通りに一日を送る。周りから見たら、ちょっと余裕のない人やったかもしれませんけどね(笑)。