女性マネジャーの出現に、現場は困惑

高崎での日々は、私にとって「工場」で働くことを一から学んでいく日々でもありました。

実は工場のオペレーションマネジャーに女性が就くのは初めてで、しかも私には工場勤務の経験があるわけではない。それがいきなり100人を超える組織のマネジャーになって、製造から梱包まですべての工程の責任を負うわけです。自分で希望しておいて言うのも何ですが、会社はようやらせてくれたと思います。

その意味で私が現れたことで困惑したのは、むしろ現場のスタッフたちでした。これまでのマネジャーは全員が男性だったし、当の私は製造のプロセスや機械の仕組みを一から学んでいるという有様。しかも本社で働いていた癖が抜けず、何かというとカタカナ言葉を使うものだから、みんなもどう接していいのかわからなかったのでしょう。

高木琴美(たかぎ・ことみ)
1990年にP&Gの生産統括本部に入社。2005年には同部門初となる女性で初めての高崎工場オペレーションマネージャーを経験。2012年から1年間シンガポールで洗濯洗剤のアジア担当アソシエートディレクターに就任。2013年に帰国後、日本人女性で初めてとなる滋賀工場長に着任。

稲泉 連=構成 水野真澄=撮影