外食にもコンビニにも迷わない
課長代理になって半年が経ったころ、真中は居酒屋にいた。
新人管理職研修で一緒だった、同年代の管理職たちとの飲み会だ。
話題は自然と仕事の愚痴になった。
「マジで帰れない」
「上は無茶振りを無茶振りとも思ってないからね」
「しかも管理職手当がつく代わりに残業代はなくなるし」
責任は増え、残業も増える。
それでも、ボーナスまで合わせれば年収ベースでは平社員のころより高い。
同じ立場の人間同士で愚痴を言い合い、2時間ほどで店を出た。
真中は駅へ向かう途中のコンビニに立ち寄り、翌朝用のサンドイッチとコーヒーを買った。
課長代理になってから、自宅で食事を済ませる回数はさらに減っている。
昼は管理職仲間と外で食べる。
会社を出るのは早くても21時ごろ。駅までの道にあるラーメン屋や定食屋へ、つい立ち寄ってしまう。
休日こそ自炊しようと思う。
だが、昼近くまで寝て、洗濯をして、少しスマホを見ていると夕方になる。
「夜だけなら外で済ませてしまおう」
それが習慣になっていた。
昇進してから、こうした出費に以前ほど迷わなくなった。
「給料も上がったんだから、まあ当然か」
そんな感覚だった。
30~34歳男性の「平均給与より上」に安心
その夜、自宅に着いた真中は、いつものようにAIを立ち上げた。
「33歳の平均年収は?」
返ってきた数字は、30~34歳男性の平均給与512万円。
一方、真中の年収は、その年540万円になる見込みだった。
平均より約30万円も高い。
「勝ってる。圧勝だ」
思わず声に出した。
ついこの前まで平均以下だったのに、一度流れが来るとここまで変わるものなのか。
真中は、自分が前に進んでいるという満足感に包まれていた。
しかし、ここには見落としやすい問題がある。
給料が増えたことと、資産が増えることは同じではない。

