安いアパートをママ友に見られたくない

とにかく仕事の時間を削ると給料が減ってしまいますから、まずは「勤務時間」を増やしました。時給で働くというのは、そういうこと。必然的に体を酷使します。何より重要だったのは「生活を守ること」「路頭に迷わないこと」しか考えていませんでしたから、とにかく「時間」という代償を必死に払い続けていました。

「堕ち過ぎてしまった……」と感じました。そんな自分が悔しかった。安いアパートに住んでいるのを、保育園のママ友とかに見られたりするのもすごく嫌でした。

当たり前に立派なマンションや一戸建てに住んでいるママ友たちは旦那さんもいて、雑談での話題も夫婦ゲンカの話とか。私は独り身だから夫婦としてのストレスこそありませんでしたが、やはり危機感や感覚が違い過ぎるので、ママどうしの雑談からも自然と遠ざかっていきましたね。

保育園の退園時間になれば、みんなでいっしょに帰らなければなりませんから、そのときに自宅を見られてしまうのが嫌で、わざと途中で買い物に寄ったりもしていました。自宅を見たママ友から「シングルマザーだからしょうがないよね、かわいそうに」などと思われたくなかったんです。

ママチャリを降りて押して歩く母親の前を歩いていく小さな娘
写真=iStock.com/Ugur Karakoc
※写真はイメージです

シンママが陥りやすい負の連鎖

高校の友達も普通に結婚して、普通に豊かに暮らしている。ママ友たちも旦那さんがちゃんと稼いでくれて、子育てに専念できて、パートしてても気楽な感じに私には見えていました。なのに、なんで私だけこうなんだろう、なんでこんな生活してるんだろう――周りと自分を比較して、本当に苦しかったです。自分には能力がない、幸せに生きる能力がないんだ、と、潜在的に自分自身をすごく責めていました。

やはり、シングルマザーでも頑張って、強がってはいるものの、子どもたちにみんなと違う家族の形を背負わせてしまっていることじたいにはずっと負い目とか、申し訳ない気持ちがずっとあったんです。

こうしてどんどん閉鎖的になって、人付き合いが悪くなっていきました。食事をするときも周りから気を遣われている気がして、本当に屈辱的でした。今思えば、周りの人たちはそんなことまで考えていなかったと思いますが。

私は両親にしっかり育ててもらったのにシングルマザーを選択し、しかも貧しい暮らし。親に対して本当に申し訳ない、という後ろめたさも実は感じていました。

「月末が来るのが怖かった」

それに、両親にはあんなに豊かに育てられたのに、自分は自分で当たり前だと思ってきた温かい生活の中で、自分の子どもを育てることが出来ていない。こんな娘で、こんな親でごめんなさい……と、ずっと思いながら暮らしていました。

子どもたちとどこかに出かけても、心から笑えるときがまったくありませんでしたし、そんな自分のこともどんどん嫌いになっていきました。ひどい自己嫌悪にさいなまれ、自己肯定感も下がる一方でした。

貯金なんてほんとに出来ません。月々稼いだお金の全部が生活費に消えるし、保育園のお金ももちろんかかります。ギリギリです。もう、言葉通り、本当にギリギリ。この手取りで家賃5万円、光熱費がかかって、月々の生命保険料(掛金)も払って。

勢口真理『シングルマザー 億り人になる』(プレジデント社)
勢口真理『シングルマザー 億り人になる』(プレジデント社)

毎月末に迫る、家賃が払えなくなるかもしれないという恐怖。「今月、大丈夫かな」とか、未納に対する恐怖心。贅沢したうえでの未納ではありませんが、かといって、それが続いたら家を追い出されるわけじゃないですか。

貧しさの恐怖ってこういうことをいうんでしょうか。「自分はダメなんだ」と精神的に追い込まれて、ずっと追い立てられる感じでした。精神的に落ち着くこともなく、未来に期待できるわけでもない。ただ、目の前のことを一生懸命やるしかありませんでした。

生活にいっぱいで、残るお金がない。貯金が出来ない。未来へのお金がつくれない。自転車操業がずっとずっと続く。絶望しかありません。

「未来への見通しがない」――これが一番苦しかったですね。

(構成=西川修一)