孤立感や息苦しさを感じる人の受け皿に
九州地方で小学生の子を持つ40代の女性党員は、当時をこう振り返る。
「地方は閉鎖的で、『○○ちゃんも打っているのに、どうしてあなたの家だけ打たないの?』とよく言われました。でも、子供への接種が不安な母親は私だけじゃなかった。そんな人たちがこぞって参政党へ入ったんです」
当時、都市部では「ワクチン懐疑派」と呼ばれる人たちが一定数存在し、SNSや集会などを通じて同じ考えの人とつながり、自分の意見も比較的口にしやすかった。一方で、この女性党員のように地方では周囲との人間関係を気にして、ワクチンへの疑念を表立って口にできない人も少なくなかった。そうした孤立感や息苦しさは、「政府や専門家は真実を隠している」「自分たちだけが真実に気づいている」という陰謀論と結びつきやすい。
もちろん、接種会場に侵入してワクチン接種を実力で阻止しようとし、逮捕者まで出したカルト団体「神真都Q」のような過激な組織についていける人は多くない。だが一方で、政府のワクチン政策には疑問を抱いている。そうした層の受け皿となったのが参政党だった。
「信念がない」代表から離れていった人
参政党は、「ワクチンを打つとマイクロチップが埋め込まれる」といった荒唐無稽な陰謀論を前面に掲げるのではなく、「子供の健康を守る」「接種するかどうかは自己決定権の問題だ」と訴えた。そのため、極端な陰謀論には距離を置きながらも、ワクチン政策には疑問を抱く人たちでも支持しやすかった。
こうした人たちから見れば、参政党は陰謀論政党ではなく、「自分たちの不安や疑問を代弁してくれる政党」と映ったのである。その結果、参政党への入党は、本人たちにとってはごく自然な政治参加だった。
反ワクチン路線は、周到に用意された戦略だったのか。篠原は神谷という人物の本質をこう喝破する。
「神谷には信念がないんだよね。その時々で、いけそうなものに手をつける。発信力のある人や、ネットでバズっている問題を取り込む。うまくいくこともあるけれど、悪い方に出ることも少なくなかった」
実際、2021年には創設メンバーのKAZUYAと渡瀬裕哉が離党した。KAZUYAは離党理由として、「党内に広がった陰謀論的な言説」や「反ワクチン路線への違和感」を挙げている。一方、渡瀬の神谷に対する評価も興味深い。「神谷が狙ったのは既成政党が取りこぼしたマーケティング対象の層だった」と明かし、神谷を「組織拡大こそ理念の人」と評した。
つまり神谷は、まず党勢拡大を優先し、そのために支持を集められるテーマを次々と取り込んでいった。その有力な手段の一つが、過激すぎない「マイルドな陰謀論」だったのである。
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