運転能力は「鍛える」ことができるのか

運転では、特に注意力や情報処理速度が重要です。これらの機能を維持・向上させるためのトレーニングとして、最近ではPCやタブレット、スマートフォン用のアプリも数多く開発されています。

これらのアプリでは「選択的注意」や「分割注意」、「注意の配分」、「持続的注意」といった認知機能を鍛える課題が用意されています。

また、視野の広がりや課題遂行能力の向上を目的としたトレーニングもあります。こうした訓練が交通事故や違反の減少に効果があると報告している研究結果もあります。

さらに、交差点や歩行者の動きなどを動画やCGで再現した訓練も開発されています。

より実際の運転に近い状況で判断力を鍛えることができる方法です。

近年は、PCなどを用いて交通場面を再現した運転シミュレータも増えてきました。シミュレータでは、「ブレーキ反応時間」や「選択反応時間」、「ハンドル操作」、「複合課題(同時に複数の作業を行う)」などを測定し、運転能力を数値として評価することができます。

訓練を繰り返すことで能力の変化を確認でき、運転リハビリテーションとして活用することも可能です。

ただし、本格的なシミュレータになるほど高価になり、個人で購入するのは難しいため、運転免許センターや自動車学校などに設置されている設備を活用しましょう。

「有効視野」はトレーニングで広げられる

UFOVと呼ばれる有効視野という概念があります。視線を正面に固定したまま、周囲の情報を瞬時に認識・処理できる視野のことですが、トレーニングによって広げることが可能だといわれています。

具体的には、画面中央を見つめながら周辺に提示される刺激を見つけるという訓練で、交通事故リスクを測定する指標としても優れているとされています。

約2800人の高齢者を対象とした調査で、UFOVの訓練を受けたグループは、10年後の事故報告が48%減少したという研究結果もあります。

その他にも「視覚走査訓練」と呼ばれるものもあります。交差点での左右確認や後方の死角確認では、首をしっかり動かして見る習慣が重要ですが、どこを見ているのかという凝視点を推定しながら「視覚走査訓練」を行うことで、注意機能を補う効果があることが報告されています。

とっさの判断を可能にする「ハザード知覚」

運転中には、周囲の車両や歩行者、道路標識など多くの情報のなかから、事故につながる可能性のある要因を見つけ出す必要があります。

この能力は危険源認知(ハザード知覚)と呼ばれます。

ハザード知覚を高めるための訓練として、交通場面の動画を見ながら、潜在的な危険を見つけるトレーニングがあります。映像を振り返りながら、「なぜその判断をしたのか」を指導者と一緒に検討することで、危険場面を理解しやすくなります。

夜間や雨天など危険性の高い条件を避ける運転を意識するようになる効果もあるといわれています。

操作能力を維持するためには、身体機能の維持も重要です。

理学療法や作業療法による研究では「首の可動域」や「体幹の柔軟性」、「下肢の反応速度」を改善する訓練を行うことで「死角確認の正確性」や「ブレーキ反応時間」が改善したことが報告されています。

具体的には、「首や肩の可動域を広げる運動」や「足首の柔軟性や筋力を高める訓練」などが有効とされています。

加えて、「後方カメラ」や「パノラマミラー」、「旋回ノブ」、「踏み間違い防止装置」などの補助装置を適切に活用することも、安全運転を支える方法の1つです。