どうやって老親を説得すべきか

つまり、運転はその人の生活だけでなく、アイデンティティにも深く関わっているのです。

だからこそ家族が、「危ないからやめて」と一方的に伝えてしまうと、強い反発や喪失感につながることがあります。

重要なのは、運転を続けたいという気持ちの背景にある誇りや不安を理解し、尊重する姿勢です。

そのうえで、安全に運転を続けるための方法や、必要に応じた代替手段を一緒に探していく――そのような寄り添い方が、前向きな話し合いと納得感につながります。

運転に必要な「基本機能」とは

では、そうした「運転を続けたい」という気持ちを持っている場合、どのようにその基本機能を維持すればいいのでしょうか。

まず大切なのは、認知機能の基盤となる感覚機能(視覚・聴覚など)を保つことです。そのためには、定期的に検査を受け、必要に応じて適切な治療や補助器具を利用することが求められます。

視力の確認は比較的簡単にできます。高齢になると白内障によって視覚機能が低下するケースもみられます。白内障になると、水晶体が濁ることで視力が低下するだけでなく、対向車のライトや日光がまぶしく感じられる「ハレーション」も起こりやすくなります。

現在では、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを入れる白内障手術の技術が大きく進歩しています。成功率も高く、日帰り手術で行われることも多いです。治療後に運転を続ける方もたくさんいます。

眼の手術と聞くと不安を感じる方もいるかもしれませんが、視覚機能の回復に大きな効果が期待できるため、眼科での定期的な受診をおすすめします。

気を付けたい「白内障」と「緑内障」

また、視力だけでなく視野も重要です。視野に異常があると、運転中の危険を見落とす原因になります。視野異常の主な原因として知られているのが緑内障です。緑内障は、早期発見と早期治療が大切です。現在は治療薬やレーザー治療なども進歩しているため、こちらも定期的な眼科受診が不可欠です。

【図表】運転の質を維持するには
出典=『免許返納を10年延ばす70歳からの運転学』(プレジデント社)

聴覚も運転にとって大切な感覚機能です。聴力が低下すると、クラクションや周囲の音の情報を受け取りにくくなり、注意機能にも影響します。

聴力検査を受け、必要に応じて補聴器を使用することは、運転時の注意力を保つだけでなく、認知機能低下の予防にも効果があるとされています。

近年はデジタル技術の進歩により、個人の聴力に合わせて調整できる補聴器も増えています。耳鼻咽喉科での定期的な検査を受けることが望ましいでしょう。

クルマに車検があるように、運転の基盤となる身体機能にも定期点検が必要なのです。

毎年、定期的に検査を受ける習慣をつくることをおすすめします。誕生日や記念日を目処にして、「誕生日が近づいているから、運転のチェックだ」、などと習慣づけると覚えやすくていいかもしれません。また、ご家族からの声かけも大きな助けになります。