日本は「経済格差が中くらいの国」
もちろん無から有が生まれるわけはないので、この超過受給分は年金などの積立金のほか、法人税や消費税、新規国債の発行(国の借金)など、他の財源によってまかなわれています。
再分配は低所得者に手厚く、所得が高くなるほど少なくなっていきます。
たとえば、所得50万円未満の世帯は拠出20万1000円に対して184万1000円を受給しており、差し引き164万円のプラス、所得1000万円以上の世帯は拠出382万5000円に対して受給90万5000円で、差し引き292万円のマイナスです。このように、高所得世帯から低所得世帯に富が再分配されることによって格差は縮小します。
その効果はジニ係数によって示されます。ジニ係数は格差の程度を示す簡便な指標で、ゼロなら「完全平等(全員が同じ所得)」、1なら「完全不平等(1人がすべての所得を独占)」で、ジニ係数が0.5を超えると格差が大きいとされ、南アフリカや南米のブラジル、コロンビアなどがこの水準とされます。
それに対して日本は、2023年の調査で再分配前のジニ係数は0.5855で、それが再分配によって0.3825まで縮小しています。これはアメリカ、イギリス、韓国などよりも低く、スウェーデンやデンマークなど北欧諸国よりも高いので、日本は「経済格差が中くらいの国」になります。
所得の経済格差は拡大しているのか
次の疑問は、「日本社会で格差は拡大しているのか」でしょう。所得に関しては、「報告書」を時系列で比較することで格差の推移を知ることができます。それをまとめたのが図表3です。
再分配前所得のジニ係数は2017年を例外として一貫して上がっており、2011年の0.5536から2023年の0.5855へと12年間で5.8%上昇しています。それにともなって再分配後所得のジニ係数も、2011年の0.3791から0.3825へと0.9%上昇しました。
「格差」とは一般に再分配後のジニ係数のことですから、12年間で0.9%(年率0.08%)の上昇を「所得格差が拡大している」とするのは無理があるでしょう。


