睡眠不足が引き起こすネガティブ感情

睡眠が足りないと、翌日は感情的になり、ネガティブな感情が起こりやすくなります。当然、それは私たちの1日のパフォーマンスにとってプラスにはなりません。これは、扁桃体(前述のように、感情を制御する脳の領域)と前頭前皮質(私たちの気持ちを落ち着かせる働きをする脳の領域)が正常に機能していないためです。

「良い睡眠は、優れたパフォーマンスの前提条件です。健康的な食事と運動を合わせたよりも、さらに重要です」と、睡眠の専門家であるフロリス・ウーターソンは語っています。「“自分は睡眠不足にうまく対処できる”と思っている人は大勢います。少しぐらい睡眠が足りなくても、パフォーマンスには影響がないと考えているのです。しかし、それは大きな間違いです」

職場で眠っている目にステッカーを貼った疲れたビジネスマン
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6時間未満の睡眠はまったく寝ないのと同じ

ウーターソンは、睡眠不足とパフォーマンスの関係に関する有名な研究に言及しました。この実験では、被験者を4つのグループに分けます。2週間にわたり、一晩に4時間、6時間、8時間の睡眠を続けるグループ、そして3日間連続で徹夜をする(不運な)グループです。

マルク・ティッヘラー、オスカル・デ・ボス『脳をオフにせよ 仕事も人間関係もうまくいく集中術』(日経BP)
マルク・ティッヘラー,オスカル・デ・ボス著/児島修訳『脳をオフにせよ 仕事も人間関係もうまくいく集中術』(日経BP)

実験期間中、各群の被験者には様々なタスクを行わせ、結果を評価しました。最もパフォーマンスが高かったのは、予想通り、8時間睡眠のグループでした。意外だったのは、4時間睡眠と6時間睡眠のグループの結果でした。本人たちは大した影響はないと感じていたにもかかわらず、3日間連続で徹夜したグループと同じくらい成績が悪かったのです。

この研究結果は、6時間未満の睡眠は、まったく寝ないのと同じくらい生産性に悪影響を及ぼすことを示しています。私が、「生産性を最大限に高めるために朝5時に起きよう」という生産性の専門家のアドバイスがあまり好きではないのはそのためです。もちろん、早起きして生産性を高めることは可能です。しかし、それは午後9時までに寝た場合の話です。早起きをしても睡眠が足りていないのなら、良いパフォーマンスにはつながりません。

マルク・ティッヘラー
認知心理学者

神経心理学の専門家。集中力・注意・脳の働きを専門に研究し、最新の神経心理学の知見を実践的に解説する研究者。集中力をテーマにした著書は国際的なベストセラーとなり、20以上の言語に翻訳されている。脳科学・心理学の研究成果を、仕事や日常で実践できる具体的な方法に落とし込むことに定評がある。TEDx登壇や国際カンファレンスでの講演を通じ、世界各国で集中力とパフォーマンス向上について発信。オスカル・デ・ボス生産性・集中力向上の実務家。研修企業「Focus Academy」の創設者として、企業・組織向けに集中力と生産性向上を支援している。ポッドキャストや講演を通じて、集中力や脳の休ませ方に関する最新情報を継続的に発信している。

オスカル・デ・ボス
生産性・集中力向上の実務家

ビジネスパーソンの生産性と集中力アップを支援する研修会社「フォーカス・アカデミー」の創設者。同社でアプリやビデオ、書籍など、幅広く実用的なツールを開発。ワークショップや講演などの活動を積極的に行う。英語やオランダ語でのプログラムも提供。