謙遜しすぎて周囲が傷ついてしまった
何かがうまくいったとき、「偶然ですよ〜」とかわすのは気楽です。注目されたくない、大げさにされたくない、自分の手柄にするのは恥ずかしい。そう思うからこそ出てくる言葉でしょう。
でも、「偶然」と言ってしまうと、自分の努力だけでなく、まわりで支えてくれた人たちの存在まで「なかったこと」にしてしまうリスクがあります。
反対に「いろいろな人のおかげで今があります」は、自分ひとりの手柄にしない謙虚さと、まわりへの感謝が同時に伝わる言葉です。
とある会社の表彰式でのこと。年間で一番の売上を出した社員が、壇上でお礼のあいさつをする場面がありました。注目が集まる中、その人は照れたように「いやあ、偶然です!」と笑ったそうです。
そのとき、会場の空気が一瞬で凍りつきました。客席には、その結果を出すために一緒に何カ月も走り回ってきたチームのメンバーが座っていたからです。
本人にとっては、ただの謙遜だったのでしょう。でもその「偶然」のひと言が、知らず知らずのうちに、陰で支えてきた人たちを傷つけてしまったのです。
せっかくのお祝いの言葉が台無しになった瞬間です。
褒めてくれた人の気持ちに応える返答
「すごいですね」と言われて、「他の人に比べたらまだまだです」と返す。日本人同士の会話ではよく見かける光景で、謙虚であろうとする誠実さが表れています。
ただ、この返し方には小さなトゲがあります。
褒めた側は「あなた」を見て「すごい」と思った。なのに「他の人」という外部の基準を持ち出されると、「あなたの評価基準は甘いですよ」と遠回しに言っているようなものだからです。
しかも「他の人に比べたら」は、会話を“比較”の土俵に引きずり込みます。褒めた側は比べたかったわけじゃない。純粋に「あなたがすごい」と伝えたかっただけ。そこに他者が登場すると、場の温度が一気に下がってしまいます。
それに対して「まだまだ成長中です!」は、比較をしていません。自分の伸びしろを認めて謙遜はしつつ、今の自分も否定していない。前向きで軽やかで、褒めた側も「これからが楽しみだね」と自然に返せます。
比べる相手は、他人ではなく昨日の自分で十分。そのほうが、褒めてくれた相手の気持ちも、自分のこれからも、どちらも大事にできるのです。