人材ポートフォリオの可視化とギャップ分析

その第一歩は、社内の「人材ポートフォリオ」、すなわち、どのようなスキルを持った人材が、どこに、どれだけいるのかを正確に可視化することです。

スキルベース組織では、社員一人ひとりのスキルデータが一元的に管理されます(詳細は拙著『誰もが成長し活躍する組織のしくみ』参照)。これにより、組織全体のスキルの保有状況を、マクロな視点で俯瞰ふかんすることができるようになります。

次に、経営戦略を実現するために「将来必要となるスキル(To-Be)」を定義します。

たとえば、「3年後までに、全社的なDXを推進し、データドリブンな意思決定を実現する」という戦略を掲げたとします。そのためには、「データサイエンススキル(レベル4)が15人」「AI活用スキル(レベル3)が20人」「変革マネジメントスキル(レベル4)が15人」必要である、といった具合に、具体的なスキルと量を定義するのです。

そして、「現状のスキル(As-Is)」と「将来必要なスキル(To-Be)」を比較することで、その「ギャップ」を定量的に把握することができます。

「データサイエンススキルのレベル4は、現状2人しかいない。あと13人不足している」
「AI活用スキルは、レベル1の人材は多いが、レベル3以上が決定的に不足している」

このギャップ分析こそが、戦略的な人材マネジメントの出発点となります。どこに、どれだけの投資が必要なのかが明確になるため、限られたリソースを効果的に配分することができます。

データに基づく戦略的な意思決定

スキルギャップが明確になれば、それを埋めるための具体的な打ち手を戦略的に計画し、実行することができます。主な選択肢は次の3つです。

Build(育成する)
社内の人材をリスキリングやアップスキリング(スキルの向上)によって育成する。

Buy(採用する)
必要なスキルを持った人材を外部から採用する。

Borrow(借りる)
外部の専門家(フリーランス、コンサルタントなど)やパートナー企業からスキルを一時的に借り受ける。

これまでは、この判断が場当たり的に行われがちでした。「人が足りないから採用しよう(Buy)」「流行っているから研修を導入しよう(Build)」といった具合です。しかし、スキルベースのアプローチでは、データに基づいて最適な選択を行うことができます。

とくに、昨今は「Build(育成)」の重要性が高まっています。

外部からの採用だけに頼るのは現実的ではありません。スキルデータがあれば、「誰に、どのようなトレーニングを提供すべきか」を的確に判断できます。たとえば、「プログラミングの基礎スキル(レベル1)を持っている社員に対して、データサイエンススキル(レベル4)を習得させるための集中トレーニングを実施する」といった、個別最適化された育成計画を立てることができるのです。