フィジカルAIを支える「4つの基盤」
ここで強調しておくべきことがある。この横軸は、競争のための軸ではない。どのフィジカルAIも、この構造から逃れることはできない。だから、横軸の正しさでは差はつかない、差が出るのは別の場所であるという結論に至る。
現実には、PoC(概念実証)で止まるAI、デモでは動くが現場では使えないAI、一度の事故で消えるAIが数多く存在する。これは、横軸の理解不足ではない。横軸を“回し続ける条件”が欠けていることが原因である。
フィジカルAIが現実世界で成立し続けるためには、次の4つの基盤が同時に成立していなければならない。
L1:知能・計算の成立基盤
横軸全体を統合し、世界を理解し、未来を予測し、行動計画を生成する判断の中枢である。この層が弱いAIは、環境が少し変わるだけで破綻する。
L2:身体・感覚の成立基盤
賢さを、現実世界の動きに変換する「器」。アクチュエータ、センサー、力制御、安全設計。これらが弱いと、どれほど賢いAIでも使われない。
L3:学習加速の成立基盤
横軸を、使うほど賢くする、失敗を学習に変えるための仕組み。シミュレーション、デジタルツイン、データ循環といったものがここに含まれる。
L4:社会・需要の成立基盤
最後に、最も見落とされがちだが決定的な層。事故時の責任、説明可能性、規制・受容性、ROI(投資収益率)で止まるAIは、どれほど優秀でも社会に残らない。
重要な点を確認しておこう。4階層は、下から順に積み上げる工程ではない。L1だけあっても失敗する、L2だけあっても失敗する、L3だけあっても失敗する、L4だけあっても失敗する。4つが同時に成立して初めて、フィジカルAIは回り続ける。これが「成立基盤」と呼ぶ理由である。
ここまでの整理から、次のことが明確になる。フィジカルAIの競争は、アルゴリズムの競争ではない。成立基盤を同時に維持できるかどうかの競争である。そして、この成立基盤の中枢に位置するのが、WFMである。
