『時間の切り売りはするな!』

1990年代に入り、成果主義を導入する企業が相次ぐ。富士通、ホンダ、キリンビールなど、大手企業が先陣を切っていった。旧来の年功的な要素から、生み出した成果へと、人への評価基準がシフトしていったのだ。

バブル崩壊といった経済現象に対応した総人件コストの削減を意図する会社はあった。だが、本質は違う。ものをつくるメーカーであっても、ホワイトカラーの構成比が上昇を続けた企業組織の構造変化への対応、すなわちホワイトカラーをどう評価するかが、根底にはあった。

「日本のビジネスマン、特にホワイトカラーが競争力を失ってしまった原因は『時間を切り売りする』というアメリカの発想を取り入れてしまったことだと、僕は思っている。

ホワイトカラーの場合、時間では成果を表せない。会社の研究室にいる8時間に、研究成果は本当に出ているのだろうか。むしろ、日常の生活のなかから、ヒントを得ているケースの方が多いはずだ。

8時間を会社に売ったよ。だから、その代金をちょうだい、あとは知らないよ。これでは、仕事や管理の継続性は欠如し、何よりホワイトカラーに最も求められる創造的な成果は見込めやしない。

いつでも仕事を意識するという考え方、哲学を持ってほしい。そのことが、会社に必要な人の条件だろう」

土曜日にゴルフを楽しむ鈴木修氏
写真提供=スズキ
土曜日にゴルフを楽しむ鈴木修氏

「自分の仕事にロイヤリティを持て」

「僕はよく、土曜や日曜に会社に来て仕事をしている。

スズキの社員に休日まで出社せよ、とは言わない。しかし、役職が上の者ほど、『時間の切り売り』という発想をもってはいけないんだ。

僕は寝床にメモを置いていて、寝に入るときに仕事のアイデアが浮かぶと、すぐに書く癖をつけている。

自分の家庭や個人もすべて犠牲にして会社に忠誠を尽くせなどと、僕は言っているんじゃない。『会社にすべてを捧げる』といった20世紀型のロイヤリティは、21世紀には通用しない。

会社に対しては常識的な最低限のロイヤリティを持ち、むしろ『自分の仕事』に対して忠誠心を持てということだ。だから、家族と土曜日に出かけたときに家族サービスをやっておきながら、気づいたことがあったなら、月曜日に出社したときには、それを具現化してみる。現実には、これでいいんじゃないか」