「文章の基本構造」を意識すると、読み方が変わる
読解力は子どもだけでなく、大人も鍛え直すことができます。多摩大学名誉教授の樋口裕一の『「頭がいい」の正体は読解力』(幻冬舎)によれば、読解力はビジネスや人間関係など人生のあらゆる場面で必要とされる普遍的な能力です。
読解力は「語彙力」「文章力」「理解力」という3つの要素から成り立ち、文章を正しく理解し、自分の考えを整理して表現するための土台になります。
『「頭がいい」の正体は読解力』では「文章は問題提起→意見提示→展開→結論という基本構造で成り立つ」と説明されています。この流れを意識して読むだけで、ただ目で追う読み方から、意味をつかみ取る読み方へと変わります。
また、次のような訓練も効果的です。
・文章に何度も登場するキーワードを見抜き、その意味を正しく理解すること
・筆者の意図を推し量り、長い文章を「要はこういうことだ」と要約する力を身につけること
こうした訓練によって、知識が自分の中で再構築され、応用できる力へと変わっていきます。
メール・読書・会話は“曖昧な理解で終わらせない”
では、この読解力を日常の中でどのように鍛えることができるのでしょうか。
ニュース記事を読むときには「これは事実なのか、それとも記者の意見なのか?」と区別するだけで、情報の受け取り方が変わります。事実を押さえ、意見を理解しつつ自分の立場を考える練習になるのです。
仕事のメールを読むときには、「依頼内容は何か」「期限はいつか」だけでなく「相手が本当に求めていることは何か」を意識して読むと、的外れな対応を防げます。単なる情報処理ではなく、相手の意図を理解する訓練になります。
本を読むときには、読み終えたら「この章の問題提起は何か?」「著者の結論はどこにあるのか?」と自分に問いかけ、1〜2行で要約してみます。これを繰り返すと、理解の曖昧さが浮き彫りになり、読解力が鍛えられます。
文章だけでなく、人との会話でも同様です。相手の言葉をそのまま受け取るのではなく、「この人はなぜそう言ったのか」「どんな前提や意図があるのか」と考える習慣を持つと、表面的なやり取りを超えて理解が深まります。
こうした日常の場面で読解力のトレーニングを繰り返すことで、知識は誤解なく理解され、行動に直結する力へと変わっていくのです。



