2割程度の企業は「粉飾」をしている

東芝の不正会計問題で、「粉飾決算は許されない」という批判がよく聞かれる。マスコミが正義を問うのは当然だろう。しかし「そんな企業はほかにない」という認識だとすれば、事実を見誤っている。広い意味での不正会計はありふれたもので、撲滅できるようなものではない。

この1年間だけでも、東芝、伊藤忠商事、積水化学工業、タカラトミーなど11社が、「不適切な会計処理」として東京証券取引所で適時開示を行っている(※1)。中小企業ではさらに深刻だ。帝国データバンクでは、年間約2万件を超える企業の取材を行っているが、そのうち1~2割の企業では不正会計があるとみている。

マスコミでは、故意ではないものを「不適切」、意図や指示があったものを「不正」、悪質な隠蔽があり、刑事事件になったものを「粉飾」と呼びわけているようだ。このうち東芝には「粉飾」との批判もあるが、経営の実体を決算に正しく記載していない企業は、ほかにも大量に存在する。実際に、裁判所では企業破産を取り扱う書類に「粉飾の有無」という項目を設けている。「決算書の内容は正しいですか」と問うほど、不正会計を行う企業は多いのだ。

なぜ企業は不正会計をするのか。最も多い理由は赤字決算や債務超過など経営不安の隠蔽だ。中小企業の場合は、金融機関からの融資の打ち切りや、仕入先からの取引解消に結びつく恐れがある。とりわけ建設業の場合、経営状態が悪いと公共工事への入札資格などを失う。いわば生き残りをかけての行動だといえる。

一方、上場企業では、株価の維持が目的になりやすい。投資家など外部から責任を厳しく追及されることを嫌がって、不正会計を行う。また組織が巨大化すると、ある部門や支店が社内での成績維持のため不正会計を行うケースもある。

不正会計の手口として、もっとも多いのが、売上、利益、資産の過大計上による赤字の隠蔽だ。架空の売上を計上することで利益を膨らませる、実体が無い企業に対して販売実績を仮装する、監査法人がチェックしにくい海外企業へ販売したことにする……。手口はさまざまだ。