S&P500は、直近5年間で年率15.05%も上昇している経済指標だ。つみたて投資枠の対象銘柄にはS&P500に連動した運用を目指す投資信託も多数含まれており、円安の影響もあって年率20%を超える上昇率となっている。
ところが2024年8月初旬、米国の経済指標悪化などを受け、S&P500を含むさまざまな経済指標が暴落した。そのため、S&P500に連動した運用を目指す投資信託の基準価格が今後も下がっていくのではないか、と不安を感じている人もいるかもしれない。
本記事では、直近の暴落も踏まえた今後の見通しやS&P500の利回りシミュレーションを紹介する。
また、新NISAのつみたて投資枠で購入可能なおすすめの銘柄も紹介するため、S&P500関連銘柄への投資を検討している人は、ぜひ参考にしてほしい。
目次
S&P500とは
S&P500とは、米国の主要企業およそ500社で構成される株価指数だ。
NYダウ平均株価やナスダック総合指数と並んで有名な米国の株式指数で、米国株式市場の時価総額(=株価×発行済み株式数)の約80%をカバーしている。
| 構成銘柄数 | 構成銘柄の変更頻度 | リターン(年率) | ||
|---|---|---|---|---|
| 直近1年 | 直近3年 | 直近5年 | ||
| 503 | 年4回(3,6,9,12月) | 29.88% | 11.49% | 15.05% |
銘柄の見直しが年4回おこなわれるため、常に実力のある企業で構成される仕組みだ。
ウォーレン・バフェットが妻への遺言で「資産の90%をS&P500(に連動した銘柄)に投資するように」と指示していることが明らかになり、日本でも人気が高まっている。
組入上位銘柄はApple、Microsoft、Amazonなど、世界的に有名な米国のIT企業が多い。
| 銘柄名 | 比率 |
|---|---|
| Microsoft (マイクロソフト) |
6.9% |
| Apple (アップル) |
5.5% |
| NVIDIA (エヌビディア) |
5.0% |
| Amazon (アマゾン) |
3.7% |
| Meta Platforms A (旧フェイスブック) |
2.4% |
| Alphabet A (グーグル) |
2.0% |
| Berkshire Hathaway B | 1.7% |
| Alphabet C (グーグル) |
1.7% |
| Eli Lilly and Company | 1.4% |
| Broadcom | 1.3% |
他の株価指数との比較
直近5年の値動きを他の株価指数と比較すると、IT企業が中心となるナスダック総合指数よりは上昇率が低いものの、日経平均株価やNYダウ平均株価より高いことがわかる。
■比較チャート(S&P500=青色)
- ナスダック総合指数(黄色のチャート)
米国のナスダック市場に上場している全銘柄で構成された株価指数。 - NYダウ平均株価(緑色のチャート)
米国の各業種を代表する30銘柄により構成された株価指数。 - 日経平均株価(オレンジ色のチャート)
日本を代表する225銘柄で構成された株価指数。日本経済新聞社が選定。
S&P500の利回りを運用期間ごとにシミュレーション
S&P500に投資するとどれくらいの利益が得られるのかを、月3万円の積立金額で運用期間ごとにシミュレーションしてみた。 S&P500に連動した運用を目指す「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に投資した場合を仮定する。
| 直近1年 | 直近3年 | 直近5年 |
|---|---|---|
| 43.58% | 21.21% | 20.78% |
ただし、シミュレーションでは株価が一定の割合で上昇し続けることを前提として計算しているため、
実際の運用結果とは異なる。あくまで目安として確認していただきたい。
運用期間1年の場合
| 元本 | 積立総額 | 利益 |
|---|---|---|
| 36万円 | 44万1,366円 | 8万1,366円 |
直近1年間は円安の影響が大きく、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は43.58%も上昇している(2024年4月26日現在)。上昇率が同じ状況で月3万円の積立投資を1年続けると、8万円前後の利益が見込める。
運用期間3年の場合
| 元本 | 積立総額 | 利益 |
|---|---|---|
| 108万円 | 149万1,945円 | 41万1,945円 |
直近3年間のeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の上昇率は81.14%で、これを年率換算すると21.21%だ(2024年4月26日現在)。月3万円の積立投資を3年続けた場合、上昇率が同じなら41万円前後の利益が見込める。
運用期間5年の場合
| 元本 | 積立総額 | 利益 |
|---|---|---|
| 180万円 | 312万746円 | 132万746円 |
直近5年間のeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の上昇率は157.01%で、これを年率換算すると20.78%だ(2024年4月26日現在)。同じ上昇率で月3万円の積立投資を5年続けた場合、132万円前後の利益が見込める。
S&P500は今後どうなる?
前提として、将来の値動きを正確に予測することはできない。
2024年8月初旬に発生した暴落が米国の経済指標の悪化によって引き起こされたように、今後も雇用統計の発表内容や大統領選の結果によって株価が下落する可能性はある。
しかし、中長期的に見ると、米国のGDP(国内総生産)は世界各国と比較し、引き続き圧倒的な成長を続けている。
したがって、GDP成長率が顕著な米国の主要企業500社で構成されるS&P500は、依然として有望な投資先のひとつといえる。
また、S&P500の組入銘柄については、定期的な入れ替えや構成比率の調整がある。S&P500 に採用されるためには、時価総額や流動性、業績などの条件をクリアする必要がある。そのため、大暴落を続ける個別銘柄に大きな割合で投資し続けることはない。
今回のような一時的な暴落は今後も起こり得るが、中長期的には、米国経済の成長が続いているうちは、S&P500も上昇が期待できるだろう。
新NISAのつみたて投資枠で買えるS&P500はどれがいい?
新NISAのつみたて投資枠で買えるS&P500は、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」がおすすめだ。ここでは5年以上の運用期間がある銘柄を3つ選定し、運用成績を比較していく。
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- iFree S&P500インデックス
- iシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンド
投資方針が同じでも、信託報酬をはじめとした投資信託の保有にかかるコストや実際の運用商品は若干異なる。リターンの差は年率0.1〜0.4%程度とわずかではあるが、現時点ではこの3銘柄のなかで信託報酬が最も低く、運用成績も良いeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)がおすすめだ。
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
| リターン(年率) | 直近1年 | 43.58% |
|---|---|---|
| 直近3年 | 21.21% | |
| 直近5年 | 20.78% | |
| 基準価額 | 2万8,145円 | |
| 純資産総額 | 4兆2,203億7,000万円 | |
| 信託報酬 | 年率0.09372% | |
| 主な販売会社 | SBI証券、楽天証券 | |
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は、他の2銘柄と比べて年率0.1〜0.4%程度よい運用成績を出している。
純資産総額(投資信託の資産から費用を除いた金額)が日本の投資信託のなかで最も多く、資金量が豊富な分、効率的な運用ができる。今後の運用次第で成績が変動する可能性はあるものの、圧倒的な人気を誇るeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の優位は揺るがないだろう。
比較用に残り2銘柄のリターンも同じ条件で記載しているので、自分の目で確かめてほしい。
iFree S&P500インデックス
| リターン(年率) | 直近1年 | 43.39% |
|---|---|---|
| 直近3年 | 21.03% | |
| 直近5年 | 20.63% | |
| 基準価額 | 3万1,303円 | |
| 純資産総額 | 2,126億800万円 | |
| 信託報酬 | 年率0.198% | |
| 主な販売会社 | SBI証券・楽天証券 | |
iFree S&P500インデックスは先に挙げたeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)と比較して、直近5年間のリターンが約0.1%のみ下回っている。
信託報酬に関してはeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の2倍ほどあり、大きな差となるため、コストを抑えるならeMAXISシリーズを選ぼう。
iシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンド
| リターン(年率) | 直近1年 | 43.48% |
|---|---|---|
| 直近3年 | 20.86% | |
| 直近5年 | 20.35% | |
| 基準価額 | 5万3,083円 | |
| 純資産総額 | 405億8,200万円 | |
| 信託報酬 | 年率0.0938% | |
| 主な販売会社 | SBI証券・楽天証券 | |
iシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンドは先に挙げたeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)と比較して、直近5年間のリターンが約0.4%下回っている。 信託報酬もわずかにeMAXISシリーズのほうが安い。やはりS&P500に連動した運用を目指す投資信託なら、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)が現状一番優れていると言えるだろう。
S&P500や新NISAのつみたて投資枠に関する質問
S&P500や新NISAのつみたて投資枠に関する質問のうち、よく聞かれるものを5つにまとめた。投資を始めようか迷っている人は、ぜひ参考にしてほしい。
- S&P500の利回りの確認方法は?
- S&P500の利回り(年率リターン)は、SBI証券や楽天証券などのホームページで確認可能だ。SBI証券の場合は「投資信託 パワーサーチ」楽天証券の場合は「投信スーパーサーチ」を選択し、キーワードにS&P500と入れて検索すると表示される。
- S&P500を毎月1万円購入すると5年後はどうなっている?
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の直近5年リターンが年率20.78%であった。このリターンが今後5年間続くと仮定して計算すると、積立総額は104万249円(44万249円の利益)になる。
- つみたて投資枠はやめたほうがいい?
- 新NISAのつみたて投資枠は、少額からの長期・積立・分散投資に適した銘柄が選ばれているため、大半の初心者におすすめできる。常に最高の投資成績を追い求める人にとっては物足りないかもしれないが、長期にわたり安定してS&P500を超える成績を出し続ける銘柄の名前を挙げるのは難しい。欲を出さずに、つみたて投資枠でコツコツと積立投資を続けるほうがリスクマネジメントの観点からは無難といえるだろう。
- 新NISAの分配金と配当金の違いとは?
- 分配金は、投資信託の運用利益や元本などから資産の一部を投資家に払い戻すお金だ。一方で配当金は、企業が利益の一部を株主に支払うお金を意味する。つみたて投資枠の対象商品は投資信託しかないため、配当金は発生しない。分配金についても、大半の銘柄が出さない方針を採っている。
- S&P500の魅力はなんですか?
- S&P500の魅力は、米国を代表する500社の企業に分散投資ができることだ。厳しい選定基準を設けて定期的に銘柄を入れ替えているため、将来有望な企業に絞って投資ができる。自分で銘柄を吟味し購入、適宜売却し、期待できる新たな銘柄を購入するのは大変なため、投資初心者や銘柄選びをプロに任せたい人におすすめだ。