呼び寄せるべきか、遠距離介護か

参議院議員 舛添要一氏

介護問題はある日突然やってくる。右も左もわからず途方に暮れたくなるが、そんな暇すらない。まず相談窓口が必要。やはり最初は病院である。病院で親の病状を精査し、どのレベルの介護が必要なのか、自分の頭で納得し、それを踏まえて介護保険を利用するために市区町村に要介護認定を申請する。

私が母親の介護をしていた頃には費用の点で大変苦労した。しかし今は介護保険のおかげで介護費用の自己負担は1割と、財政的には随分楽になっている。介護認定が下りればケアマネジャーと相談して「日中は面倒が見られるからナイトケア中心に」など個々の事情に合わせ介護メニューを決めていく。介護保険を上手に使うのが第一だ。

同時に介護施設への入所手続きも早めに手を打つ。ほとんどのサラリーマンは施設を利用せざるをえないからだ。金銭に余裕があれば有料老人ホームもあるが、まず公的な施設である特別養護老人ホーム(特養)や老人保健施設(老健)への入所を考える。私の母の場合、平日は老健に預け、週末の土日、私が福岡に帰ったときは自宅に連れてくるパターンで介護をしてきた。

問題は特養も老健も待機児童ならぬ待機老人が多く、なかなか入れないことだ。私も母親を東京に連れてきて特養に入れようとしたが3年待ちと言われた。地方のほうがまだ見つかりやすい。いずれにせよ、半年、1年と待たされるから1日も早く申し込みをするべき。入所できるまでは民間のグループホームなどを活用してつないでおく。

遠方の親が寝たきりになった場合、呼び寄せて面倒を見るか、遠距離介護をするかが大きな選択だ。家族の状況次第だが、私が母親を東京に呼び寄せるのを断念した理由の1つは介護の先輩からこう言われたからだ。

「呼ぶのはアンタの都合。その年になって見知らぬ土地に行きたいと思うか」