植物工場:国内127カ所が稼働中。課題はコストカット
大企業の「植物工場」への新規参入が相次いでいる。2012年4月には大和ハウス工業が550万円からの植物工場ユニットを発売。5月には三井不動産やパナソニックなどが家庭用植物工場の実証実験に取り組むことを発表した。
植物工場とは、植物の生育に必要な環境をLED照明や空調、養液供給などで人工的に制御し、季節を問わず連続的に生産できるシステム。農地以外でも生産でき、面積当たりの収量が多いうえ、病害虫のリスクが少なく、無農薬で栽培できるといった利点がある。
経済産業省などの調査によれば、全国で稼働中の植物工場は、この3年で50カ所から127カ所に増えている。これは経産省と農水省が09年に整えた補助制度の効果が大きい。しかし京都府で国内最大規模の植物工場を運営するスプレッドの稲田信二社長は、「事業者の数は増えていない」という。
「実験やCSRが目的の工場が多く、ビジネスとして野菜を供給している事業者は、多くても20社程度だと思います。植物工場は『太陽光利用型』と人工照明を使う『完全制御型』の2つに分けられ、後者のほうが工場としての利点は大きいのですが、初期投資の回収に10年ほど必要です。栽培ノウハウの構築も難しい。温度や湿度、照度、二酸化炭素、養液バランスなど、環境制御には高い技術が要求されるため、補助金で工場はつくれても、本格的に参入できる事業者は少ないのです」
06年設立のスプレッドは、現在、日産2万株のレタスを生産し、年間7億円を売り上げる。それでも1000億円規模といわれるレタス市場でのシェアは1%に満たない。一番の課題はコストだ。露地物レタスの小売価格が120~160円程度なのに対して、スプレッドの売り出す「ベジタス」は約200円。今後は工場の自動化で価格引き下げを目指す。稲田社長はいう。
「5年後ぐらいには露地と同価格にできる可能性もある。安全性への意識の高まりや農家の高齢化でニーズは高まるとみています。工場産レタスのシェアも、今後10年以内に20%ぐらいに高まるのではないでしょうか」