AIは人間のような「直感」を持ちはじめている

――面白いですね。将棋の羽生善治さんが言われていたことですが、棋士の指し手の選択肢はAIのように膨大にあるわけではなくて限られた手のなかから直感的に閃きで選んでいる。それが第3次AIブームになってから、もしかしたらAIも閃きのようなものを持ったんじゃないかと。

つまり、棋士の指し手の選択についても閃きという説明不能な部分がある。それならAIの説明不能な指し手の選択を閃きと考えてもいいんじゃないかということですよね。

現在では将棋のプロの棋士たちは、AIが指した手をみんなで解釈して説明して新しい手を探しています。AIの閃きを説明しようとしているともいえます。先生が言われているXAI的な未来を、もしかしたらプロ棋士たちがすでにやっている可能性はありますね。

【辻井】そうかもしれません。結局大きなデータを使って何かやるというのは、ある種の直感みたいなものを捉えていることだと思うんですね。それまで第3次のAIブーム以前のAIというのは直感的なものは捉えず、むしろ切り捨ててきていたわけです。僕らが合理的に規則化できるものを入れようとしていたわけですから。

ところが人間の判断というのは、多くの経験を積み重ねることによって、うまく説明できないんだけどキーになるものを選ぶことができる。そういう全体論的な、ホリスティックな判断、直観があったわけです。その能力をAIが持ちはじめているのは確かだと思います。

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「AIを分析するAI」でホワイトボックス化

――第4次のAIブームは、具体的にはどういうふうに進んでいくとお考えでしょうか?

【辻井】いくつかのフェーズがあると思っています。1つはAIのなかで何が起こっているかを透明化して見せる。実際に判断をしているAIの横に、その判断過程を見ている別のAIがいて、何を見ているのかを上手に人間の側に見せてあげるみたいなイメージです。

AIを分析するようなもう1つのAIをつくって、ちょうど人間とAIの間を仲介する役割を担わせます。アテンションの機構を可視化して、AIがこういうところを見ているのでこういう判断をしたんだと理解できるようにするとか、深層学習のネットワークの内部を可視化してどういう特徴量を捉えているのかを人間にうまく見せてあげる、といった試みが行われています。

AIを完全なブラックボックスから少しずつホワイトボックス化する役割を別のAIにやらせるわけです。