このままではスキルワーカーが海外へ流出する

――それが企業の業績にも関係しそうですね。

【エミン】そう。それがこれまでの経営効率低下にもつながっているし、結果的に賃金が上がっていない。国全体の賃金が上がらないのは理解できますが、スキルワーカーの賃金も上がらないのはおかしい。

たとえば、プログラマーやAIエンジニアの給料がアメリカの4分の1であれば、優秀な人はアメリカへ行ってしまいます。アメリカと日本には物価の違いがあるから、単純に4倍にはならないけど、それを考慮しても賃金の差を2倍くらいまで縮める必要があります。でもそれをやるには、あまり仕事をしていない人たちをクビにしなければならないのです。それはつまり、アメリカのように能力に合わせて賃金を支払うことです。「同じ時期に入社したから、みんなに同じ給料を払います」ではなく、しっかり仕事をしている人には、それなりの賃金を払わなければいけない。

いままで日本企業は、どちらかというと一人ひとりのやっていることが少なく人海戦術で乗り切ってきました。人手不足でそれができない時代になっていますから、持っているリソースを最大限に生かす方向に経営戦略が変わらなければなりません。

ただ、日本はものすごく抵抗感はあると思います。同期入社なのに「私よりできている」「私より給料が高い」というのは、日本人はものすごく受け入れがたい。

私は金融業界にいたので男社会でしたが、男社会の嫉妬心は恐ろしい。これを乗り越えないと難しいです。

――アメリカは実力主義と言われていますが、人事評価制度が明確になっているのでしょうか。

【パックン】会社に利益をもたらす人に対する給料アップ、見返りは日本よりはるかにはっきりしていますね。エミンさんがおっしゃるように、日本で頑張っても年収800万円、1000万円で天井にぶつかるのであれば、高い価値を生み出す労働者はアメリカへ行ってしまいます。

“子持ち様”論争は海外でもあるのか

――日本ではずっと少子化が課題になっています。その中で小さな子どもを持つ親が優遇されすぎているとの論争がSNSで起きています。“子持ち様”と呼ばれ、子どもが熱を出したときなどに急に会社を休んだり早退してしまう。その分のしわ寄せが来た人の中には、不満を感じている人もいます。こうした論争について、どうお考えですか。

【パックン】僕は小さなお子さんを持つ家庭を優遇することには賛成ですが、まず日本が将来的にどういう国になりたいのかを考える必要があると思います。我々の世代で逃げ切ればいいと思うなら、僕も遊びまくりたいです。

僕は、この国で自分の子ども、孫、ひ孫とずっと暮らしてほしいと思っています。そのためには人口がこれ以上減らないでほしいと思っています。将来的にこの国を守るためには、子育てしやすい日本を目指さなければいけないと思います。

子どもが小さいうちは働ける時間が減ってしまうかもしれませんが、問題ありません。数年経てば、元に戻ります。親は子どものために頑張るし、子どもを大学に行かせるため、子どもに自慢される親になるために、仕事を頑張ると思います。

撮影=遠藤素子
「将来的にこの国を守るためには、子育てしやすい日本を目指さなければいけない」とパックンさん。