人間の心はすごく敏感に繊細に、発信の裏側にあるものを感じ取る

まず私自身、番組でお話しするのが楽しい。そしてリスナーの中には、その内容を役に立ててくれる人もいるでしょう。中には文句を言う人も出るかもしれません。

それは私にとって取らなくてもよかったリスクですが、「聴いてよかった」と思う人が一人でもいれば、私はじゅうぶん満足です。

その満足の基準は再生回数が伸びるかどうかではないため、それに心をかき乱されることもありません(企画者にとってはビジネスですから、そうも言っていられないでしょうが)。

反対に「こう言えば私の評価が上がるだろう」と自分だけの利益を目的にして発信すると、たとえメディアの仕組みにうまくはまってバズったとしても、得られるのはその瞬間の満足だけで、むしろ空しくなります。これを我利我利がりがり亡者といったりします。

松波龍源『ビジネスシーンを生き抜くための仏教思考』(イースト・プレス)

私は武道をするので、ときどき武道系の動画を見ることがあります。その多くが「誰かの役に立てば」という思いで作られている一方で、ときどき「俺はこんなことができるんだ、すごいだろう」という“ドヤ感”が透けて見える動画に出くわすこともあります。そういうコンテンツを見たときは、あまりいい気持ちがしないものです。

このように、人間の心は舐めたものではありません。すごく敏感に繊細に、発信の裏側にあるものを直感的に感じ取ります。

ですからそれをきちんと認識し、人間の認知に畏怖の念を持って「自分だけでなく、他者の喜びにもつながるか」を基準に発信すればいいのではないでしょうか。それが後々きっと自分のためにもなります。

もしそのとき周りから批判されたら、受け入れつつも「気にするな」というスタンスでいればいいのです。釈迦牟尼も、そう言っているのですから。

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