論文作成の最も重要な作業は、人間にしかできない

では、何が重要な問題なのか? それは、アクセスランキングのトップにある記事のテーマではありません。それらは、多くの人が関心を持っているというだけのことです。

論文作成の最も重要な作業は、人間にしかできないと思われます。スポーツや株式欄の記事には、こうした要素がありません。これらは、データを与えれば定型的に書けます。また、小説の場合は、奇想天外な展開をしてもよい。こうした分野では、AIが書く文章が今後増えていくでしょう。

しかし、論述文で奇想天外な展開をされたら困ります。事実に反することを事実であるように書いたり、論者の評価と違う評価をされたりしても困ります。これらは、執筆者本人がコントロールしなければならないものです。ですから、人間が関与せずに論述文ができあがるとは考えられません。

「これこれの問題について、人々をあっと言わせる論文を書いてくれ」と指示するだけで、あとは寝ながら待っていればよいというわけにはいかないのです。

写真=iStock.com/ipopba
※写真はイメージです

音楽や画像では、AIが創作を始めた

音楽や画像ではどうでしょうか? AIを用いた音楽制作プラットフォームは、いくつも作られています。

ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は、iOS向けのAI作曲支援アプリ、Flow Machines Mobileの提供を開始しました。「J-POP」「ジャズ/フュージョン」などと楽曲のジャンルを指定すると、4小節もしくは8小節のメロディをAIが自動生成します。この他にも数多くのアプリが利用可能です。

画像については、2022年の夏に大きな展開がありました。AIを活用して画像を作るサービスがつぎつぎと登場したのです。文字列を打ち込むだけで、きわめて高いクオリティーの画像が表示されます。

MidjourneyとStable Diffusionなどの画像作成AIが公開されました。Stable Diffusionはオープンソース化されていて、営利、非営利を問わず、使用が許可されています。

8月に開催された第150回アメリカ・コロラド州の美術コンテストのデジタルアート部門で、Midjourneyを使って作られた作品が1位になりました。作品を提出したのは、ジェイソン・アレン氏。ゲーム会社の経営者・ゲームデザイナーであり、アーティストではありません。芸術コンペに応募するのも初めてでした。作品制作に要した時間は、80時間程度でした。

AIが大量に画像を生成してくれるので、制作コストが下がります。デジタルアーツのクリエイターにとっては、大問題です。