収入はあっても、日用品や家電が足りない

その状況下、ロシアでは制裁による西側諸国からの輸入減少によって生活に必要な資材が不足し、消費者物価は高止まりしている。2022年12月の消費者物価指数(CPI)の変化率は前年同月比11.9%だった。半導体などの輸入が減少したことによって、日用品や家電をはじめ、財の生産は難しくなっている。

また、ロシアは戦闘を継続するために家電に用いられる半導体を戦車に流用しているとも報じられた。人々の自由な意思に基づいて消費や投資を行うことは一段と難しくなっているだろう。

ウクライナでの戦闘が長引けば長引くほど、ロシアの社会心理が不安定化する可能性は高まる。特に、今日の経済と社会ではSNSによって人々はつながりやすくなっている。ウクライナでの戦闘継続に不満を持つ人同士が結託することをロシア政府は人海戦術によって摘発しようとするだろう。しかし、当局の意にそぐわない投稿のすべてを監視し、摘発することは難しい。結果的に、人々の反発心は追加的に高まりやすい。それに伴いロシアの個人消費は追加的に減少し、企業の収益と雇用機会も減少すると予想される。

1年で浮き彫りになったロシアの深刻な問題

短期的にロシア経済はそれなりに持ちこたえる可能性はある。中印をはじめとする新興国、途上国からのロシア産原油や石炭などに対する需要は増える可能性はある。

特に、米国で利上げが実施されている環境下、経常収支が赤字の新興国などにとって、相対的に価格が低いロシア産原油を輸入する必要性は増すはずだ。それは、債務リスクに対応しつつ国内経済を安定させるために必要だ。そうした制裁の抜け道は、一時的にロシアの戦費の調達や経済の運営を支える要因にはなる。

しかし、中長期的に考えると、ロシア経済の成長率は低下基調をたどるだろう。最も深刻と考えられる問題として、ロシア経済は自力で需要を生み出し、満たすことが難しい。2022年、ロシアの自動車生産台数は前年比67%減の45万台だった。1991年の旧ソ連崩壊以降で最低の生産台数だ。

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トヨタ自動車など主要先進国の自動車メーカーによる生産の停止や撤退と、国内メーカーの生産能力の脆弱ぜいじゃくさ、車載用半導体など部品調達の減少などによって、需要を満たすことはこれまで以上に難しくなるだろう。