女性がバイクに乗るのは「カッコいい」と言われるが…
アンコンシャス・バイアスは、「男らしさ」「女らしさ」のジェンダー(性)規範の社会的圧力を増強し、男女双方を苦しめます。こうした事態を変えるためには、男性だけではなく、女性も意識を変えなければなりません。
ジェンダー規範の社会的な圧力は、男女いずれにもかけられていますが、男性のほうがジェンダー規範から逸脱した人への世間の目が厳しいと私は捉えています。たとえば、学生さんたちに教えるときにわかりやすい例として挙げるのが、バイクに颯爽と乗っている女性が「カッコいい」と前向きに見られても、かわいいぬいぐるみを集めている男性は変な目で見られることが多いということなどですね。
男性は幼い頃から「人前で泣いてはいけない」「力強くなくてはいけない」などと、男性であることをさまざまな場面において行動で示す必要に迫られやすいことなども関係していると見ています。
男性の生きづらさは、女性の生きづらさにも関係している
――男性の生きづらさに対して、政治や社会はどのように取り組んでいけばよいでしょうか
日本は男性を対象としたジェンダー平等政策の導入において、欧米諸国に大きく立ち遅れていますが、早急に取り組むべき課題だと考えています。男性に対するジェンダー平等政策は、男性だけでなく、女性の生きづらさを解消することにも関係しているからです。
たとえば、欧州連合(EU)では近年、新たな男性のあり方を示す政策的な概念として、子育てなどのケア役割への関与を促す「ケアリング・マスキュリニティー(ケアする男性性)」を提唱しています。男性が、女性が担ってきたケア役割を引き受けられるようになれば、女性のケア負担が軽減され、外に出て働きやすくなります。
日本でも「イクメン」をもてはやし、一方で「ケアメン」の実態把握をないがしろにすることなく、長時間労働の是正や、育児・介護休暇を取りやすくするための職場環境の改善など、制度と意識の両面での実効性のある改革を進めてほしいですね。