家庭のコントロールが効かない端末

ほとんど制限がない形で渡されたクロームブック。学校側が“設定ミス”をして、このような仕様になっていたわけではない。

和哉くんの同級生のお母さん、木村聡子さん(仮名)は教えてくれた。

「A校長は、あえてルールを設けず、子供の自主性に任せて、失敗のなかで学ばせるという方針なんです。クロームブックを持ち帰らせる際も『長時間や深夜の使用はしないようにしてください』『勉強以外に使わせないようにしてください』と書いたお便りを渡すだけ(写真参照)。でも、これは家庭に押し付けているだけ。無責任だと思います」

A校長が先駆者としてICT教育について取材を受けた記事がある。そのなかでA校長は「ルールをつくらなかったことで自主運営できるようになった」と話しているが、木村さんは「これはウソ。実際にはめちゃくちゃな状態で、記事を読んだ時はどこの学校の話かと思いました」と断じる。

2人が何より迷惑だと語るのは、家庭で使っている端末も学校のID・パスワードでログインすると、使い放題になってしまうことだ。

「わが家には学校で配られる前からクロームブックがあったのですが、それについては私のメールアドレスでアカウントを作成し、検索のフィルタリングをしたり、使用は1時間以内と制限をかけていました。しかし、子供は制限のかかった家庭のアカウントからログアウトし、使い放題の学校アカウントでログインして、ゲームをしてしまう。家庭でのルールが無意味になってしまうんです。学校が管理権限者なので、私たちは設定に触れることができません。家庭に管理を押し付けるなら、せめてコントロールできるようにして、って言いたいです」(小林さん)

保護者提供
クロームブックを渡す際に配布されたお便り。管理を家庭に押し付けている

授業中もゲームし放題。ICT推進校の実情

子供たちが配られたクロームブックで遊んでいたのは、家庭内だけではなかった。

和哉くんと、その同級生である勇くん(仮名)、直之くん(仮名)は「授業中も自由に検索したり、ゲームしていた」口を揃える。

学校で人気だったのは、「slither.io」というヘビのゲームや「VENGE」というシューティングゲーム。VENGEはオンライン上で待ち合わせて一緒にプレイする子もいたという。

「友達とはハングアウトというチャットでやりとりできました。部屋(対戦するステージ名)を伝えれば、そこで待ち合わせできます」(勇くん)

先生に見つかって叱られないのかと聞くと、「厳しい先生だと没収されることもあるけど、優しい先生だと『やっちゃダメだよ』くらいにしか言われない」(直之くん)という。さらに、クロームブックは授業中に先生の目を盗んで遊びやすい機能もあるのだという。

「クロームブックは、Alt+Tabを押せばすぐに画面が切り替わるので、先生が通ったときだけ課題の画面にすればいい。みんな課題はさっさと終わらせて、残り時間は遊んでいました」(勇くん)