部下の不満は評価によって上司に知らされる
また、「キャリアフェア」と呼ぶ各職種のライブセッションも開催している。営業技術、サポートエンジニア、マーケティング、開発などの職種の部長クラスが仕事の内容や面白さ、キャリアの積み方について説明する。全部で8回程度のセッションがあり、終業時間後に近くのホテルなどを借りて開催する。例えば次はマーケティングをやりたいという社員にとっては興味のある職種を知るうえで参考になる。また、同社では中途採用する際は、部門ごとに募集活動を行っているが、外部からだけではなく同時に社内にも公募する。フェアの開催は社内リクルーティング活動の一環としてのメリットも併せ持つ。
さらにキャリアコーチングも受けられる。外部のキャリアカウンセラーが担当し、現在の職種に合わないといった上司には相談できない悩みや目指すキャリアに対する客観的アドバイスなどを行う。昨年から始めているが予約がいっぱいになるほど人気が高いという。その他、現在のキャリアをより究めたいという人に対する外部講師によるトレーニングコースや将来のキャリアを見据えたキャリアの棚卸しを目的とする「キャリアエクスプレス」など多種多様なメニューを用意している。
キャリア開発面談でより重要な役割を果たすのは上司の存在だ。上司の積極的関与を促す仕組みの一つが同時期に行われる全管理職を対象とする「マネジャーフィードバック」と呼ぶ部下による評価である。部下の育成などマネジャーの役割約20項目を部下が評価し、評価結果はマネジャーではなくその上の上司に通知される。例えば評価結果を受け取った部長は「結果をマネジャーに見せるのではなく、本人の強みと弱みを指摘する際に部下はこう見ているよ、といった話し合いをより意味のあるものにするために活用している」(四方人事本部長)。
上司の言葉を通じてマネジャーに気づきを与えることで効果の高いキャリア開発面談を促すという狙いがある。
同社ではマネジャーの裁量が大きい。例えば報酬制度自体は全世界共通であるが、評価をどうつけるかという評価権限はマネジャーに委ねられている。「極端に言えば、部下の半分が目標を達成できなければ査定ゼロも可能。あるいは全員が目標を達成したら全員を同じ評価にすることもやろうと思えばできる」(四方人事本部長)。
権限が大きい半面、部下の不満はマネジャーフィードバックなどを通じて跳ね返ってくる。いかに部下の納得性と信頼性を得るかが人事評価やキャリア開発面談でも問われることになる。
当然ながらいかに優秀なプレーヤーであっても、マネジメント能力に欠ける人材をラインマネジャーに据えれば職場の不満が高まるというリスクも発生する。必ずしも昇進だけがキャリアステップではないことを示すために、キャリアモデル構築の際に専門職としてのキャリアアップの仕組みを目に見える形で打ち出している。
「例えばキャリア面談の際に、人事のマネジャーになりたいという場合、部下を持つマネジャーに何が必要かという具体的要件がキャリアモデルに出ている。単に上に進みたいといっても部下をマネージし、チームを引っ張ることが難しい人もいる。本人の得意分野を伸ばすほうがいいと思えば、専門職系のキャリアの道を提案する場合もある」(四方人事本部長)